交際0日婚でクールな外交官の独占欲が露わになって――激愛にはもう抗えない
 祐駕くんは言いながら抱擁の腕を緩め、私の鎖骨の辺りを優しく撫でた。
 チリリとした、あの痛みが脳裏に蘇る。

「映茉と離れるのが惜しかった。少しでも長く一緒にいたかった。あの時はこの気持ちをまだ意識していなかったが、映茉に焦がれで仕方なかったんだ」

 彼が私にキスマークを落としてくれた、あの日。彼がドイツに帰国する前の、あの夜。
 祐駕くんは、あの時からもう、私を――。

 見上げた祐駕くんは、ほんのりと頬を染めている。けれど、私を見つめる真剣な瞳は、愛しさを孕んでいる。

「ごめんね、祐駕くん……」

 私が、間違っていた。彼の愛を感じていたのに、そこに愛がないと思っていたなんて。
 安堵と、嬉しさと、愛しさ。いろんな感情を言葉に乗せる。
 祐駕くんはそんな私の『ごめん』を受け取ってくれたのか、もう一度ぎゅうっと抱きしめてくれた。

「映茉、コイツの言う事信じるのか?」

 祐駕くんの腕の中で、旭飛の声が聞こえた。
 腕を解かれ顔を上げると、旭飛はまだ祐駕くんを睨んでいる。

 けれど、私は指で涙を拭い、旭飛の方をしっかりと向いた。
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