《番外編》愛し愛され愛を知る。
「理仁さん! あの、どうでしょうか?」
「似合ってる」
「本当ですか?」
「ああ。俺は嘘はつかねぇ。そもそもお前は元が良いんだから、普段からもっとお洒落に気を使えばいい」

 これは嘘偽りの無い本音だった。
 正直ここまでとは思わなかったが、俺としては芸能人なんかよりも余程真彩の方が魅力的だと感じていた。

「そんな事、ないです。それに、普段はやっぱり動きやすい方がいいので」
「まぁ、家事をするには動きやすい方が良いだろうが、出掛ける時はこうしてお洒落をすればいい」
「でも、悠真が居ますから」
「お前は今は一人じゃねぇ。普段は朔や翔、他の奴らも近くに居る。悠真の事はいくらでも見る奴がいるんだから、お前はもっと自分の事を優先していいんだ」
「……ありがとうございます」
「さて、せっかくお洒落してんだ。このまま帰るなんて勿体ねぇ。このままもう少し出かけるぞ」

 言って俺は真彩の手を取って歩き出し、スタッフたちに見送られながら店を後にした。

「あの、理仁さん……一体何処へ……」
「レストランを予約したからそこで食事をする」
「えぇ!? いや、こんなにしてもらった挙句にレストランだなんて!」
「俺がしたくてしてる。遠慮はいらねぇ」
「でも……もう夜だし、流石に悠真もぐずっているかもしれないし……」
「悠真は大丈夫だ。さっき翔に様子を確認したが、朔や他の奴らが一緒になって買った玩具で遊んでいるらしい。飯も食わせたから安心していいと言ってたから心配はいらない」
「そう、ですか……」

 やはり一番悠真の事が気がかりだったらしい真彩は様子を聞けて安堵の表情を見せる。

「だから、真彩も今は思い切り楽しめばいい。それとも、俺が相手じゃ不満か?」

 折角お洒落をしたんだから、今は悠真の事も忘れて楽しんでもらいたい。

「いえ、そんな事はありません! こんな……こんなに良くしてもらえて、気に掛けてもらえて、本当に感謝しています」
「そうか。俺はお前が喜んでくれたならそれでいい。ほら、行くぞ」
「……はい」

 そんな俺の思いが伝わったようで、真彩は笑顔を見せてくれた。

 俺はきっと、この笑顔が見たかった。

 遠慮せずに、心から喜んでくれる彼女の笑顔が。


 まだまだお互い知らない事だらけだけど、少しずつ知っていきたい。

 異性にそんな感情を初めて抱いた瞬間だった。



―END―
< 17 / 17 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:2

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
過去の恋愛が原因で、「女にだらしない男」を何よりも嫌う向坂 来海(29)。 一方、御曹司で誰にでも優しく、来る者拒まず──けれど、誰にも本気になったことのない羽柴 充輝(29)。 本来なら交わるはずのなかった二人は、ある出来事をきっかけに関わるようになる。 他の女性とは違い媚びることも期待することもない来海の態度に、充輝は次第に強く惹かれていく。 「誰にも本気にならない」はずだった彼の、一途すぎる想いに触れ、恋を信じることを避けてきた来海の心は少しずつ揺らぎ始めていき――。 不器用で焦れったくて、簡単には進まない二人の恋の行方は……。 他サイト様にも掲載中
表紙を見る 表紙を閉じる
ハイスペ狙いの私にとって、恋愛経験ゼロの年下くんは“対象外”だった。 あの日、間違えて電話をかけてしまうまでは。 不器用なくせに一途で、真っ直ぐで、時々ずるい。 そんな彼に翻弄されながら、私は少しずつ本気の恋を知り、彼の深い愛に落ちていく――。 藍島 朝陽 23歳 × 木葉 亜佑美 26歳 ※あくまでもフィクションです。設定等受け入れられない場合はすみません。 ※他サイト様にも掲載中。 ※表紙画像はAIにて生成しました。
表紙を見る 表紙を閉じる
結婚を約束しながらも、ある事情によって引き裂かれてしまった二人。 それから四年後――シングルマザーとして幼い娘を育てる瀬戸 和葉の前に、かつて愛した鳴海 湊が現れる。 湊は一人で頑張る和葉を放っておけずに何かと手を差し伸べるようになり、もう二度と離したくない湊の一途な愛情に包まれながら和葉は止まっていた恋と向き合っていくも、彼女はある秘密を抱えていて……。 運命に引き裂かれた二人の甘く切ない再会ラブストーリー。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop