俺様レーサーは冷然たる彼女に愛を乞う


「羽禾っ、具合でも悪いのか?」
「え?」

 海岸線に車をとめて、瑛弦と羽禾はビーチを歩いていた。
 すると、瑛弦のスマホに基から電話がかかって来て、ちょっと目を話した隙にビーチに蹲っている羽禾を目にしたのだ。
 慌てて駆け寄った瑛弦は、羽禾の手元を見て思わず吹き出す。

「何やってんだよっ」
「何って……」

 だって羽禾の手には、幾つもの石が握られていた。

「お前、どこにでもマーキングすんのな」
「マーッ……、違います!!この地を訪れた思い出を残したいだけですっ!」
「だから、マーキングだろ」
「違うって言ってるでしょっ!!」

 羽禾はぷくっと頬を膨らませ、プイっと顔を逸らした。

「ヒィ~~~ィッ、お前、ホント見てて飽きねーな」

 笑いのツボに入った瑛弦は腹を抱えながら笑い、尚も石拾いをしている羽禾を優しく見つめた。

「寒くねーの?」
「寒いですよ」
「じゃあ、車に戻るぞ」
「あとちょっとだけ待って」

 11月のイギリスの気温は10度前後。
 大西洋に面しているとはいえ、冬の海風は冷たい。

「で~きた♪」
「すっっげ、絶妙なバランス」

 コンウォールは岩場が多く、ゴロゴロとした石だらけ。
 
 羽禾はそのゴロゴロっとした石を拾い、大きな岩の上に絶妙なバランスで石を積み上げたのだ。


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