ズタズタに傷ついた私に、たぎる溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
凛には翼の姿は見えていないはずなのに、彼女がまぶたの裏に描いた景色の中に、五十年前にともに過ごした頃の翼の姿が、くっきりとした輪郭を持って立っていた。すべては凛の想像なのに、翼の睫毛の一本一本までもが、微細に再現されている。

何度も繰り返し夢想することで、凛は想像上の翼の姿を逞しくしていったのだろう。

翼は常に凛の中で、生き続けていたのだ。


凛が心の中で囁いたのが聞こえた。

「翼さん、ずっと愛してた。ずっと愛してる」



暗転。

力を失った身体が、ベッドにぺたりと全体重を預けるように横たわった。
静寂が、辺りを包む。

呼ばれて部屋に入ってきた医師が脈を確認し、時計を見た。

翼はマントで顔を覆い、姿を消した。
一羽のカラスが、病室の窓の外を横切って行った。




終わり

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