『愛のため、さよならと言おう』- KAKKO(喝火) -
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 月が変わるごとに『夏休みがきたら翔麻を呼んでちょうだい。
またあの子の可愛らしい顔を見たいのよ。お泊りで来るように言っといてよ。  

 子供だけのお泊りといっても百合子さんにも都合があるだろうから早めに
連絡しといたほうがいいわよ』


 早瀬は毎月清子にせっつかれる。
 母親ほどせっつきはしないが、父親も翔麻に会うことを心待ちにしているのが
分かる。


 自分の言い分は真っ当なことで何も間違ってはいないと思うが、
それでも早瀬の中で百合子を非難し、彼女たち親子を追い出してしまった形に 
なったことに多少の悔い(心残り)があった。


 そして早瀬自身もまた、翔麻は今頃どうしているだろうかと
気にはなっていたのである。

 伸之から請求のあった百合子への慰謝料は、半分自分が持つことにした。

 残りの建て替えた分を百合子はこれから少しずつでも自分に払うと言い、
彼女は有言実行、その後毎月1万円ずつではあるが3ヶ月続けてちゃんと
早瀬の口座に振り込んできた。


 そして4回目は3万円5回目は5万円と少しずつ額を増やしていった。

 返済額が増えるのは早瀬目線からすると喜ばしいことなのだが5万円も
支払えるようになったということは仕事も大変なのではなかろうかと
少々心配でもあった。


 その5回目の支払いが7月の末にあった。


 8月に入ると職場なども盆休みに入るだろうしと、多少百合子の休めることなども
考慮したうえで早瀬は百合子に翔麻のことで連絡を取った。


 百合子によると、翔麻は

『おばあちゃんたちやお父さんにはすごく会いたいけど、ママがいないと
ひとりでおばあちゃん家で泊まれない』

と言ってるらしかった。


 それで早瀬はお盆休みを利用してなんとか親子で泊りに来れないかと
百合子に打診してみた。

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