『愛のため、さよならと言おう』- KAKKO(喝火) -
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 一方、夏休みに遊びに来させないかという話を早瀬から聞かされた頃
百合子は自分と息子の生活のため、息子を昼も夜も母親に見てもらい、昼間は事務のパート、そして夜はキャバクラのアルバイトと、掛け持ちで働いていた。


 お盆なので事務のほうはなんとかなりそうだったけれど夜職のほうが
なかなか休みを取るのは難しかった。


 だけどこの先も早瀬やその両親がずっと毎年翔麻に興味を失わず、
会いたいと言ってくれるかどうか確信はない。


 一期一会の気持ちで翔麻に楽しい時間を過ごしてほしいとの気持ちから
首を覚悟でなんとか夜職のほうも休みを取った。


 父親と母親の揃った家庭生活を翔麻に体験させることができ、たっぷりと
愛情を注いでくれる祖父母の愛情にもふれた一週間は翔麻にとっても百合子に 
とっても楽しい時間となった。


 そしてその楽しい時間はあっという間に終わりを告げた。


 百合子が久しぶりに翔麻と顔を見せた滞在初日の日、彼女は働き過ぎの
せいかとてもやつれて見えた。


 それで息子との一週間が終わった頃、何気に自宅に戻って行った百子のこと 
が気になり、百瀬は彼女の様子を知りたいと思うのだった。


 もともと早瀬は学生時代百合子に惚れていた。

 一度デートに誘ったが、当時百合子には恋人がいた為興味を持ってもらえず 
やんわりと断られたという経緯がある。


 元々惚れていた相手ゆえ、一週間とはいえ一緒に過ごしているとやはり
心中には複雑な想いというか葛藤があった。
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