『愛のため、さよならと言おう』- KAKKO(喝火) -
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 新作の二作目にも取り掛かっていない百子からすると、もうこの先
縁のない人だと思っていた山下から連絡が入る。


 それはメールではなく電話でだった。



『もしもし……山下です。石田さん?』

『お久しぶりです。石田です。どうかされましたか?』

 何かあったのかしら? と百子は内心でまず最初にそう思った。


『どこか外で……そうだな、ちょっと寒いですがご近所の公園ででも
お会いできませんか? お話したいことがありまして……
石田さんにとって大変重要なことです』


 どうして今すぐに話してくれないのだろう、百子はそう思ったが
口にしなかった。


 外で山下に会うことをめんどくさいとか億劫だとは思わなかったから。



『分かりました。じゃあうちの近所の公園で待ってます』

 百子は山下と何時頃に落ち合うかを相談して決めた。


 ちょうど、百子の近所には……近所といっても徒歩で10分ほどかかるのだが 
有名なお寺さんのある公園があり、以前何かで話をしていた時に山下は
その公園のことを知っているような口振りだったので、今回行き方を
知っているのかなどということは敢えて山下に訊かなかった。



 寒い日が続いていたのに、外で会う約束をした山下たちは恵みを
授けられたかのようにこの日は寒い季節にしては随分と暖かかった。


 家から近いということもあり、百子は午後、待ち合わせの時間ぴったりに
公園へと出向いた。


 待ち合わせ場所に行くとすでに山下がベンチの側で立って待っていた。


 この公園はマラソンの練習ができるほど広くて、その上細い通路のように
できている道に入ってゆくと今度は池があり、そこを横切ると散策するのに
ぴったりな空間が広がっている。




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