『愛のため、さよならと言おう』- KAKKO(喝火) -
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◇百子との復縁

 映画を観たことで百合子との間にできた翔麻がほんとに自分の子であったのか? 
ということに今更ながらに伸之は思い至り、弁護士を雇いいろいろと
奔走し無事慰謝料が振り込まれた。


 百子に借りた金と百合子からの慰謝料でしばらくは家計をなんとか
回していけそうだと両親とリビングで話していた時のこと。父親の口から
意外な言葉を聞く。


「儂は百子さんは絶対私たちにビタ一門貸さないと思ってた」

「ほんとに、私もそう思ってたわ」

 いつも寡黙に父親の言うことに従うだけで意見など言わない母親までもが
父親と同じことを口にした。

 いや、百合子から取り立てた慰謝料の話だろ、今は。

 なんでここで百子の話が出てくるのだ。
 何故か伸之はイラついた。


「それにしても愉快としか言いようがないな。
 あの百合子に私ら三人ともまんまとしてやられたな。はははっ」

「ほんとよぉ~」

 何なんだ、この人たちは。

 してやられたというのに、百合子のことを他人事のように話す両親に
ますますイライラが募る伸之だった。


「儂としたことが、利用価値があると踏んで利用していたつもりが逆に
利用されてたんだからな。

 会社が順調だったら先では他人に会社を譲り渡すところだった」


「止めてください、今更そんな気分の悪い話は」


「気にするな。自虐ネタで反省を込めてるんだ。
 それにお前を責めているわけじゃない。

 百合子を選べと進めたのは他の誰でもないこの儂だということを
忘れたわけじゃないよ。

 伸之にも母さんにも、そして誰より百子さんや孫たちに酷いことを
したもんだよ、全く。
 だが謝罪しようにも今更だ」


「あなた……」


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