口に甘いは腹に毒
覚悟……。
そうだね。わたし、怖がってた。
玉露くんが拒んでくれたから、それに乗じて逃げたんだ。
あの場で伝えることだってできたはずなのに。
最後まで、那由多先輩から大切なことを教わってばかり。
背中を押してもらわないと、ずっと受け身だったな。
「……はい。玉露くんに振られてきます」
那由多先輩の目をまっすぐと見つめ返す。
自分で立ち止まったり、玉露くんが遠ざかったり。
ぶつかろうとしても回避されてきた気がする。
それでわたしも退いてちゃ、いつまでも距離が縮まらないままだ。
「那由多先輩はやっぱりすごいです、わたしも……あなたみたいになれたらな」
恋とは少し違ったみたいだけど。
間違いなく、特別で必要な人だった。
「当然だ。俺以上に良い男はいないからな」
彼は完璧な人であり続けてくれたのだ。