冷血弁護士と契約結婚したら、極上の溺愛を注がれています
 夏の佳き日、雨上がりの爽やかな快晴の朝に、私たちは結婚式を挙げた。

 教会のバージンロードを新郎の颯斗(はやと)さんと歩いて、誓いのキスをして――拍手が湧いて、祝福の声があがる。
 
 純白のウェディングドレスに身を包んだ私を祝福してくれる参列客の中には、無事に就職したスーツ姿の弟や、奥さんと娘さんと三人家族の形を取り戻した鈴木店長の姿がある。
 それに、芸能人や企業家やマスコミの姿もあって、「すごい人の妻になってしまった」と実感する。

「あ……」

 彼と噂になっていた女優の姿に気付いて、息を呑んだ。
 女優は幸せそうに夫と子供と寄り添っていた。

「あの家族も以前は揉めていたんだ。でも、今は元通りだよ。前よりも絆が深まっていると聞く」
 
 颯斗さんは「後ろめたいことは何もない」という風にあっさりと紹介した。
 仲睦まじそうな家族の姿は微笑ましくて、美しい絵画のようだった。
 
「果絵。帰ったら、契約書を直さないか?」
「契約書ですか。なくてもいいと思ってしまいますけど……」
「夫婦生活のルールを決めるのは大事だと結婚情報誌にも書いていた」
「読むんですか、結婚情報誌」
「俺はなんでも読むぞ」
 
 颯斗さんが真面目な顔をして結婚情報誌を読む姿が目に浮かぶ。
 想像しているのを察してか、彼は冗談めかして付け足した。

「子ども向けの絵本も読む。もし子どもができたら、読み聞かせには自信があるぞ」
「子ども、ですか。素敵ですね……」

 颯斗さんが子どもを溺愛している姿を見たら、世の中の人はみんなびっくりするんじゃないかな。
 ……まだ授かってはいないけど。
 
「子は授かると嬉しいが、無理してまで欲しがるものでもない。俺は、君が幸せに笑っていてくれれば、それが一番だ」
「颯斗さんって、たまに心を読んでます?」
「果絵の考えを察したいといつも思ってはいる」
   
 愛情に充ち溢れた蕩ける笑顔の彼を見て、「彼があんな顔をするなんて」という驚きの声が参列客から聞こえる。
 
 もう、彼が「冷血」と呼ばれることはなくなるかもしれない。
  
 彼にエスコートされて外に出ると、色とりどりの紙吹雪が本物の花と一緒に宙を舞って、クラッカーの音と拍手と声援とが、地上を賑やかに囃しててお祝いしてくれる。
 
「颯斗さん……私、今、幸せです。大好きです。ありがとうございます」

 心を籠めて言うと、颯斗さんは私の頬にキスをして参列客をさらに沸かせた。

「愛してる、果絵! 俺も今、幸せでいっぱいだ――ありがとう」
  
 よく晴れた青空に、純白の雲が悠々と流れている。
 
 空の天気のように、人生も明るく輝かしい時もあれば、曇ったり大雨だったりする時もある。
 あの雨の日に、落としたものを拾ってもらって傘を差し伸べてもらったみたいに、これから先の日々で雨が降った時には、助けあい、支えあって生きていこう。
 失敗して泥まみれになっても、お互いに励まし合って、立ち上がって、再び歩き出せる関係でいよう。
 
 私たちの新しい日々は、ここから始まるのだ。

 幸せと誓いを胸に、私は新しい一歩を踏み出した。
 
 ――FIN.
 
 

 

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