君と僕と傷と。
今だってこんな状況でそんなことを考えている。



ちがう、私はこんな思いをするために生きているわけじゃない。



「すみません、後ろつっかえてるんでごたごた言うのやめてあげてくれません?店員さん、困ってるし」



同い年くらいの男の人の声が、敬語の中にたっぷりの棘を含んでクレーマーに突き刺していく。



含みある笑みを片方の口角にのせていて、ずいぶんと余裕のある態度だ。





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