シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
 料理を堪能したあと、ホテルに戻る。
 いろんなことがありすぎて疲れていた⼀花は⾞の中でうとうとしてしまう。
 寝ていていいと⾔われたが、必死で⽬を開けていた。
 ホテルに着くころには眠さが限界で、颯⽃に謝る。

「颯⽃さん、すみません。バーには付き合えなさそうです。私にかまわず⾏ってきてください」
「君を置いていくわけがないだろう。俺もそこまで飲みたいわけじゃない」

 颯⽃はあきれたように彼⼥を⾒て、苦笑する。
 ⼆⼈はそのまま部屋へ戻った。

「先に⾵呂に⼊るといい」
「ありがとうございます。お⾔葉に⽢えて、⾏ってきます」

 買った下着などを出して、⼀花は浴室に向かった。
 本⽇⼆度⽬の⾵呂だ。
 でも、⾵呂を上がると、今度はしっかりブラジャーもショーツも⾝につけてからバスローブを着た。
 浴室を出た⼀花に颯⽃が「先に寝てろ」と声をかけてくれる。
 ありがたく寝室に⾏くが、キングベッドにもそもそ潜り込みながら、ここで彼と⼀緒に寝るのかと思うと⽬が冴えてきてしまい、あんなに眠かったのに眠れなかった。

「あれ? 起きてたのか?」

 ⾵呂から上がって、バスローブ姿の颯⽃が寝室に⼊ってきた。
 ⼀花の⽬が開いているのを⾒て、意外な顔をする。

「お⾵呂に⼊ったら、⽬が覚めてしまって」

 近寄ってきた彼にドキドキしながら、⼀花が答える。
 すると、颯⽃はベッドに乗り上げてきた。
 ⼝端を上げた不敵な笑みを浮かべている。

「もしかして俺を待ってたのか?」
「え? ……んっ」

 ⼾惑っている間に、唇を奪われた。それどころか下唇を軽く噛まれて吸いつかれる。
 覆いかぶさってきた颯⽃が⼝づけながら愛撫を始めた。
 ⼤きな⼿が頭から髪を伝って、⾸筋をくすぐり、肩をなでる。
 そんなふうに触れられると、⼿から熱が移るように⼀花の⾝体がカァッと熱くなった。
 でも、一花はその手を掴んで止めた。

「ち、違います! ただ眠れなかっただけです!」

 そう言うと、彼もからかっただけのようで、ふっと笑って、ごろんと横になった。
 そして一花を胸に抱き寄せ、耳もとで「おやすみ」とささやく。
 そこから離れる前に、チュッと唇が触れていき、一花の顔が先ほど以上に赤くなった。

(こんなの眠れるわけないじゃない!)

 颯斗の体温を感じ、ドキドキとうるさい心臓をなだめて、無理やり目をつぶる。
 彼は一花を寝かしつけるように、優しく髪をなでてきた。
 その甘いしぐさをどう捉えたらいいのかわからないまま、彼女は眠りに落ちていった。
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