シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
 繋がりを解いたあと、二人は快感の余韻に浸りながら、たわむれるように軽いキスを交わし、微笑み合う。
 颯⽃は彼⼥の腹をなでながら、つぶやいた。

「君との⼦どもが欲しいな」
「⼦ども……」

 もちろん避妊はしていたが、思わず⼀花は颯⽃との⼦どもを想像してしまう。彼似の⼩さな男の⼦。
 胸の奥がキュッとなる。

(私も颯斗さんの⼦どもが欲しいわ)

 急に颯⽃との未来が明確に描けてしまった。
 育ってきた環境も置かれている⽴場も違うので苦労はしないとは⾔えないが、彼となら乗り越えられると思ってしまったのだ。
 しかし、彼⼥が黙り込んだのを誤解したようで、颯⽃は髪を掻き上げ苦笑した。

「悪い。また先⾛りすぎだと⾔われてしまうな。結婚も了承してもらえてないのに」

 そのつぶやきがやけにさみしそうで、⼀花の⼼が痛くなる。
 彼がそんな表情をすると、居ても⽴っても居られなくなる。

「あぁ、もうっ、降参です!」
「⼀花?」

 突然叫んだ彼⼥を不思議そうに⾒て、颯⽃が⾸を傾げた。
 そんな彼の顔を引き寄せ、⼀花は⾔った。

「私もあなたと結婚したいです。あなたの⼦どもが欲しい」
「っ!」

 息を呑んだ颯⽃が無⾔で彼⼥を抱きしめた。
 彼⼥の頭に額をつけ、ささやく。

「ありがとう」

 感極まった声を出した颯⽃はゆっくり顔を上げ、⼀花を⾒つめた。
 彼は快晴の⻘空のようにさわやかな笑みを浮かべている。
 その幸せそうな顔に⾒惚れた。
 颯⽃は彼女の額にキスを落とし、真摯に告げる。

「愛してる、⼀花。俺が君を全⼒で⽀える。だから、一生そばにいてほしい」
「はい、颯⽃さん。信じてます。ずっとそばにいます」

 ⼀度は疑ってしまったが、彼の愛はもはや明⽩で信頼しかなかった。
 ⼆⼈は惹きあうように⼝づけた。
 そのあと颯⽃によって、⼀花はさんざん貪られた。

 

「……そういえば、絶対に他の男を家に⼊れるなよ?」
「え?」

 一花が幸せな倦怠感に包まれ、ぼんやりしていると、ふいに颯⽃が言い出した。
 意図がわからず、一花は首をかしげる。
 
「⼊れませんよ。そもそもお客さんを呼ぶという発想がなかったんです」
「それならいいが……。もしかして君の師匠はここに来たことはあるのか?」
「あぁ、師匠なら何度か……」
「それは容認できないな」
「え、だって、師匠ですよ?」

 そう言いながら、小木野に告白されたことを思い出す。

(今まで忘れてたなんて、薄情だわ、私……)

 でも、颯斗に会ったらもう彼のことしか頭になかったのだ。
 師匠には誠意を持って謝ろうと思った。
 その一花の様子からなにか察したようで、颯斗はめずらしく拗ねた顔をして、つぶやく。

「でも、男じゃないか」

 その表情にふと思い至って、一花はからかうように言った。

「もしかして焼きもちですか?」
「妬くに決まってる。あんなに仲がいい様子を見せられて」
「だって、師匠は師匠ですよ? あなたは私の恋人なんだから張り合う必要はないじゃないですか」

 一花が不思議そうに言うと、颯斗は恥ずかしそうに額に手を当てながらも主張する。

「師匠でもなんでも君に男が近づくのは嫌だ。俺は自分で思うより嫉妬深いようだ……」

 その独占欲を露わにしてくれたのがうれしくて、一花は彼に抱きついた。

「でも、こんなことをするのは颯斗さんだけですよ?」
「もちろん、そうでないと困る」

 抱き返しながら、颯斗がそう言って、口づけてきた。
 ふふっと笑った一花は幸せそうに目を細めた。
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