情炎の花〜その瞳に囚われて〜
え?

「凪ちゃんだよね?」

急に名前を呼ばれて私の足は地面に縫い付けられたかのように全く動かなくなってしまった。

なんか怖い…

驚き過ぎると人は声が出なくなるらしい。

「無視しないでよ」

フードを目深に被り男性の顔は見えない。
身長は私と同じくらいだろうか。
170前後で小太り。
口元の怪しい笑みだけが薄っすらと浮かび上がって見えて気味が悪い。

「ねぇ。凪ちゃん。俺の事いつも見てるよね? 誘ってるんでしょ?」

何言ってんのこの人…
こんな人知らない…

すると急にガシッと両肩を掴まれた。

「凪ちゃん。俺だけの凪ちゃん…はぁ…はぁ…」

き、気持ち悪い…
だ、誰か…

「や、やめ…て…」

なんとか声を振り絞って僅かに出した声も雨の音にかき消されてしまう。

怖い。

足がガタガタと震える。

傘もいつの間にか離してしまった。
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