近付きたいよ、もっと、、、。
「お帰りなさい、朔太郎くん、大丈夫なの?」

 自宅に戻ると他の組員や真彩に出迎えられた理仁たち。

 真彩は心配そうな表情を浮かべながら、翔太郎に支えられた朔太郎に声を掛けた。

「心配掛けてすいません、姐さん。怪我は本当、大した事はないんで大丈夫ッス!」
「そう、それならいいけど……」

 そんなやり取りを皆の後ろに立っていた咲結がボーッと眺めていると、

「咲結ちゃん、いらっしゃい。咲結ちゃんも大変だったわね。怪我は大丈夫?」

 朔太郎と話を終えた真彩に声を掛けられた。

「あ、はい、お邪魔します。怪我は、その……大丈夫です」
「そう。とりあえず、お風呂入ってきた方が良いわね。こっちに来て」
「え、で、でも他の皆さんも入るだろうし、私は……」

 真彩にお風呂を勧められた咲結だが、理仁や朔太郎、他の組員たちを差し置いて自分が先に入るのはどうなんだろうと躊躇っていると、

「咲結、俺たちは後から入るから遠慮しないで入って来て」

 朔太郎にそう声を掛けられた事で、これ以上遠慮する方が迷惑になると察し、『分かった』と頷いた。

 真彩に案内された咲結は、真彩によって用意された下着やタオル、寝間着代わりの洋服を手渡されてお風呂場へ。

 一般家庭よりも少し広めのお風呂に戸惑いつつ、髪や身体を洗ってからお湯に浸かる。

 そして、今日あった様々な出来事を改めて思い返していた。

 今思うと、助かった事は奇跡なのではないかというくらいに危険な状況に置かれていた咲結の身体は温かいお湯に浸かっているにも関わらず小さく震えていた。

 勿論それは寒さからではなく恐怖からくる震えなので、なかなか震えは治まらない。

 暫くお湯に浸かり続けていると、外から声が掛かる。

「咲結ちゃん、大丈夫?」

 その声は真彩のもので、長湯し過ぎたと気付いた咲結は慌てて返事をする。

「あ、すみません! 今上がります」
「大丈夫ならいいの。朔太郎くんが逆上(のぼ)せて無いか心配だって言うから声を掛けただけだから。急かしてごめんね、ゆっくりでいいからね」
「ありがとうございます」

 いつまでも上がって来ない事を朔太郎が心配していると知り、咲結の口元には少しだけ笑みが浮かぶと共に、自然と震えは治まっていた。
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