ANEMONE〜恋に終わりを告げたなら
優しい人
水瀬「本当に、一人で帰られる?ここで待っててもいいのよ」
小学時代の担任であった水瀬先生。
一年の頃から変わらずずっと、私の担任だったらしい。
記憶をなくした私に気を遣うことなく、ダメなことはダメと怒ってくれていいことをしたら褒めてくれる。そんな先生だった。
水瀬「レイは不器用で、人に誤解されやすかったけど……すごく良い子だっだわよ。記憶をなくしちゃっても、何も変わってない」
昔の私を隠すことなく教えてくれる、唯一の人だった。
施設で暮らしていて特殊な環境で育った私は、あまり笑わない子だったけど優しい子だったと。
「……大丈夫です」
心配する先生に、頭を下げ学校を後にする。
気怠い身体に、いつもの道が長く感じた。
休憩にと立ち寄った公園のベンチに座っていると視界の橋を一人の女性が横切った。
淡いベージュのコート。
お腹を大きく膨らませた妊婦さんが、急に立ち止まり苦しそうにうずくまる。
「大丈夫ですか?」
この時の妊婦さんが八重さんだった。
手を差し伸べる私に八重さんはありがとうと笑って大丈夫だと頭を撫でた。