おとぎ話と秘密の物語~あべこべ世界で人助けをする事になりました~

わからない

「――シラユキさん……っ」

 小屋に着くや否や、開口一番にシラユキさんの名前を呼びました。
 いきなり中へお邪魔するのは失礼に当たると思い、シラユキさんが普段いる木陰辺りを探してみますが、動物達含めて誰もいませんでした。

「……突然押しかけるのは、やはりよくなかったでしょうか」

 そう思っていると、

「……何で来たの」

 と不服そうな表情を浮かべながら、白のケープコートを揺らすシラユキさんが森の奥から現れました。

「し、シラユキさん……」
「何であんなことしたの? ……って、言いに来たの?」
「あ……っ、えっと……」

 シラユキさんはいつもののんびり、ふわふわな雰囲気は持ちつつも、暗い表情を浮かべています。
 私は心配でここへ来たはずなのに、シラユキさんの表情が怖くて、来てはダメだったのかもしれないとさえ思い始めました。

「私は……ただ、心配だったんです。きっと、理由があるのはわかっていましたから」
「なんで……? 心配なんて、ないでしょ。僕の何を心配するの……? 僕はシェルディを苦しめてる犯人なのに」

 シラユキさんは片方の腕を握りしめるように、怒りを抑えるようにして言いました。
 その時、思いました。
 シラユキさんは、自分自身に怒っているのだと。

「……シラユキさんは、シェルディさんのこと……お嫌いですか?」
「どうして、そんなこと聞くの……?」
「すみません……」

 シラユキさんは片手で持っていた本を抱きかかえて、小屋の方へ体を向けました。
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