朱の悪魔×お嬢様
「…強がってなんかないわ」

 視線を美玖から逸らす。

 が、すかさず美玖が視線の先に回りこんできた。

「なら、私の目を見て言って下さい」

「…っ大丈夫よ。もう、子供じゃないんだか」

「違う!死の恐さに、悲しみに、大人も子供もありません!!…目を、背けないで…あなただけじゃない。恐いのは、あなただけじゃ、ない」

 恐さ?

 死の『悲しみ』だけではなく、『恐さ』と言ったのだろうか?

 …あぁ、そうか。

 私は、恐がっていたんだ。

 死が与える恐怖

 ―――孤独、という名の恐怖に、恐がっていたんだ。

「…ありがとう」

 凜はポツリと呟くと、もたれかかるように美玖に抱きついた。

「え、り、凜さ」

「ごめんなさい。やっと…泣けそうなの」

 美玖の戸惑いの声を遮り、耳元で囁く。

「…」

 美玖は無言でぽん、ぽんと背中を優しく叩いてくれた。

 静まり返る部屋に凜の小さな声だけが響く。

 美玖は凜が泣き止むまで背中を優しく叩き、

 凜は気の済むまで泣いた。



 分かってくれた。

 分かってくれたんだ。

 自分でも分からなかった

 私の心を―――。
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