剛腕SATな旦那様は身ごもり妻を猛愛で甘やかす~利害一致婚のはずですが~
「待て! 最後まで話を聞いてくれ!」
ところが、父から腕を掴まれ強引に引き留められてしまう。
手加減なしに力を込められ、二の腕に指が食い込んでくる。
とても五十歳を過ぎた男性とは思えず、恐怖すら感じた。
「は、放してっ!」
震える声で真綾が叫んだその刹那。
「どうした?」
突如として現れた人物に、思わず目を見張った。
「鳴海さん……」
リネン素材のシャツとグレーのボトムス姿の鳴海は真綾の腕を強引に掴む父を視界に入れるなり、思い切り眉を顰めた。
「彼女に何の用ですか? あなたの行為は刑法二百八条の暴行罪に当たる可能性があります。ただちに彼女から離れてください。これは警告です」
淀みなく法令を読み上げる鳴海の毅然とした態度は、父を怯ませた。
ましてやここは機動隊訓練所の真ん前だ。
先ほどから正門の警備にあたっている隊員が、何事かと、こちらの様子を逐一うかがっているのが、遠目からも確認できる。
騒ぎを起こして、分が悪いのは父の方だ。
「な、なんでもないっ! 今日は帰る」
父はそう言い残すと、尻尾を巻いて逃げ帰っていった。