女嫌いなはずの御曹司が、庶民の私を離しそうにない。



耳まで赤くなった加賀見先輩は、むせながら私を睨む。


すみません、もう一本もまだ一口しか飲んでなかったから一瞬間違えたかと思って……。

でも、新品のペットボトルなら開けたときのカチって音がするからわかりません?




「つまり私だけのせいではないです」


「何がだ」


「間接キス未遂事件が、です」


「間接キス未遂事件とか言うな」




加賀見先輩は大きく大きくため息をついて、無事新品だったことが保証された水をぐいっと飲む。




「まったく、川咲のせいで余計に疲れた」


「……それはすみませんでしたね」


「だからちょっと休ませてくれ」


「はいはい、ごゆっくりどうぞ」




保健室にでも移動するつもりかな。

そう思って見ていると、先輩は立ち上がることなくまたその場で横になった。


──ただし、頭を私の膝の上にのせて。




「な、何してるんですか!?」


「枕があった方が寝やすい」


「はい!?」


「今日の授業はどうせもう終わりだろう?」


「まあそうなんですけどそうじゃなくて!」


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