[慶智の王子・伊集院涼介の物語]冷酷弁護士と契約結婚
退院以来涼介は甲斐甲斐しく鈴音の世話をしている。抜糸までの2週間、初めての有休も取った。


『大切な人を失いたくない』と感じたあの日から、とことん彼女を甘やかしている。


少しずつ傷口が癒え痛みが軽減しても、鈴音は軽い家事すらさせてもらえない。


傷口は抜糸まで濡らせないため、ラップでぐるぐると巻き短時間でシャワーを浴びる彼女。


「一緒に入ったらもっと簡単だろう? 俺が洗ってやるのに」


涼介は真っ赤になっている鈴音をからかう。


左肩が痛くて腕があげられなかった鈴音の髪を毎日洗うのが習慣になり、痛みがほとんどなくなってからもそれは続いている。

ドライヤーで乾かされるのが心地よく、鈴音はよくウトウトしてしまう。そんな彼女が愛おしくて仕方がない涼介。


「もう1人で髪の毛も洗えるし、そろそろ家事も再開したいの」


「最低抜糸まではダメだよ。」


(まるでお姫様になった気分。毎日こんなに尽くされていいのかな? 温かく甘いシロップの温泉に浸かっているみたい。いつかはここから出なければいけないけれど、出たくない。もっとここに浸かっていたい。ずっとこのこのままでいたい)
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