騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

 先輩達がぱらぱらと帰る中、私も内心焦りつつも事務室を出た。そして、東棟を出て王城敷地内にある女子寮へ急ぐ。

 何故こんなに焦っているのか自分でも分からない。本人はああ言っていたけれど、どうせ来てるわけがないと分かっているのに。


「テレシア、お疲れ様。遅かったね」


 女子寮に着くと寮母が偶然いて出迎えてくれた。彼女は私の祖母くらいの歳でとても柔らかい雰囲気の人だから、仕事終わりに話しかけてくれるとようやく仕事が終わったと気が抜ける。

 けれど今日は、緊張感が走った。


「……ちょっと仕事が長引いちゃったんです」

「夕飯はちゃんと食べた?」

「はい」


 でも、寮母は何も言ってこない。もし誰か来ていれば、寮母が一番最初に伝えてくれるはずなのに。

 けれど、何かを言われるわけでもなく「じゃあゆっくり休んでね。おやすみなさい」と残して、そのまま行ってしまった。……やっぱり、来ていない?

 それもそうだ、相手はエリートの近衛騎士団長。さすがにこんなところにまた来るなんて事、ないない。

 安堵のため息を吐きつつ、私の部屋がある二階に向かって階段を登った。もうこんな時間だから足音はあまりたてないようにしないと。そして、鍵を開け、ゆっくりとドアを開けた。そして、中に入り閉めた時だった。


「はぁ、疲れ……」


 気が付くのが、遅かった。

 いきなり背後から抱きしめられてしまった。危うく口から声を出しそうになったけれど、ぐっと堪える。

 全然、気が付かなかった。けれど、落ち着け私。今日も同じような事があったよね。


「遅かったな」


 今日、倉庫で聞いたあの低めの声。

 あの人だ。あの時、今日も来ると言っていた事を覚えている。本当に、来たんだ。けれど、鍵はちゃんとかかっていた。さっき確認したから確実だ。それなのにどうして、部屋の中に入っているんだろう……
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