騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

「ねぇねぇ、恋バナしましょ! あなたの話を聞かせて!」


 どうして、私は今……私は東屋で、第三王女殿下と席に座り恋バナを始めようとしているのだろうか……

 始まりは、朝。先輩達と持ち場を交代し遅めの朝ご飯を摂り持ち場に戻る時だった。向かう途中でデカルド団長に声をかけられ、第三王女殿下がお呼びだと東屋に行くよう指示された。

 一体何事かと身構えていたが……何故かニコニコした殿下が迎えてくださり、目の前の席に座るよう促された。流石に王族の座る席に同席するのは、警備中の騎士としてアウトだろうと伝えたが……


「私が言ってるんだからいいの! もし誰かに言われたら私の名前を出してくれて構わないわ。ほら、いっぱいケーキを用意したの。食べてみて!」


 隣国で流行っているらしいケーキを、用意されてしまった。

 私は一体、どうしたら……? あの、デカルド団長、さっき「殿下の指示に従うように」と言っていたけれど、もう一言欲しかったです。

 だいぶ上機嫌でケーキを食べ出す殿下に、ただ愛想笑いしか出来なかった。どうぞお召し上がりください、とそちらのメイドにお茶まで出される始末。

 ……どうしたものか。


「それでそれで、あなたは好きな人はいるの?」


 ……危うく、紅茶を吹き出すところだった。危ない危ない。

 それを言われてしまうと、昨日のことを思い出してしまう。愛想笑いは得意だけれど、目の前にいらっしゃるのは団長様のご婚約者様。そして、この国と友好関係を築いている隣国の王女様でもある。

 何かしでかしたら、大問題にまで発展してしまう。

 それだけは、絶対にダメだ。


「……その、そういった事には経験がないので……」

「あら、ご令嬢でもあるのよね? 婚約者とかはいないの?」

「……いらっしゃったのですが、つい先日諸事情で破談となりました……」


 この話は出したくはなかったけれど、流石に王族の前で嘘はいけない。はぁ、誰か助けてくれ……


「そうなの……あなたも大変なのね。でも、あなたが所属している騎士団には男性が何人もいるでしょう? そういった方はいないの?」

「……その、私は王城騎士団に入団してまだ3年ですので、周りの方は先輩ばかりですから……騎士として尊敬している、と言いますか……」

「あら、そういった目で見たことがない、という事? そう、でも一度考えてみたらどう? 尊敬から発展する恋なんてものもあるだろうし……」


 ……ないな。申し訳ないけれど、それは絶対にない。

 面倒くさがりで仕事を押し付ける人はいるわ、賭け事に巻き込まれるわ、冗談で済まされない冗談を言われるわ、酒を飲まされるわで全く、そう、全く思った事はない。

 けれど、相手は王族である前に17歳の女の子。流石に夢は壊したくない。
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