騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!
混乱していると、隣に立っていた団長様が私の肩をトントンと優しく叩いた。落ち着け、という事なのだろうか。
そして、陛下は何とも楽し気にこう仰った。
「お主の父方の曾祖母の妹の娘が私の乳母。それであるなら私の娘も一緒だろう?」
「……さよう、ですか……」
私の曾祖母、ひいおばあ様の妹が国王陛下の乳母……とマーフィス家の家系図を思い出し辿ってみた。けれど……いやいやいや、全く娘じゃないから。そもそも乳母の時点で血なんて繋がっていないんだから。国王陛下の娘ですって? おこがましいにもほどがあるわっ!!
けれど、陛下方はクスクスと笑っていらっしゃる。なるほど、そういう事だったのか。
そういう事があって陛下とお父様は何となく近い存在だったという事ね……知らなかった。というより、先に言っておいてほしかったですお父様。でも王城騎士団の入団に渋っていたのはこれも理由に入っていた、とか……?
「テレシアよ、私は期待しているぞ。あのマーフィス男爵の血を受け継ぐ騎士なのだ。……期待を裏切らないでくれるな?」
先ほどまでは、冗談じみた事を言ってクスクスと笑っていたからか周りは戸惑いを見せていた。ざわざわとしていたのに、陛下の一言で、この会場の空気が一瞬にして重苦しくなった。
――期待を裏切るな。
この言葉は、恐ろしい言葉でもあり、そしてありがたい言葉でもある。
それは、絶対に騎士を辞めるな、という事。
陛下が直々にそうおっしゃったという事は、私が騎士をしている事に文句をつけるのであれば陛下が出てくるという事。これで、周りは下手に私を非難出来なくなる。
そして、私は陛下をがっかりさせないよう、日々精進していかないといけない。自分の失態で騎士を辞めざるを得なくなるような事態は、絶対に起こすことなく期待に応えなくてはいけない。
これは、言葉は悪いが足枷という事になる。恐らく、父を思ってのこの発言なんだと思う。
なら、私にとってこれは嬉しい事? 悲しい事?
答えは考えなくても出ている。
嬉しい事の一択だ。
期待されている。なら、相手は誰であってもその期待に応えるまで。騎士を辞めるな? 上等だ。いくらでも、辞めろと言われてでもこの道を踏み外すことなく、自分の求める先に進むのみだ。
それに、先ほどの話でお父様含め私もコネで騎士をしていると思う者達は増えただろう。けれど、陛下の先ほどの言葉でそれは間違いだということが証明された。王城騎士団に入団出来ないほどの実力であれば、こんな言葉をかけるなんて事はしないはずだから。
「必ずや、ご期待に添えるよう精進して参ります」
その言葉に、周りは戸惑いの色を見せた。
「あぁ。お主の活躍を楽しみにしている」
こんなことを女性に誓わせるなんて、と思ったことだろうが、私は喜んで誓う。