騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

「あら、それって、もしかしてお遣いではなくて? 女性ですからそれくらいの仕事しか任せられないのかしら。騎士団の方々は大変ですこと」


 彼女達の目は、私の抱える大きな封筒に。このご令嬢達はそんなに私が騎士団にいる事が嫌らしい。まぁ、騎士団にいて一番下の爵位である男爵家の令嬢だから、格好のエサになる事は分かる。とはいえ、私としては別にそんな事を言われたとしてもどうってことない。

 それよりも、他のレパートリーはないのだろうか。毎回毎回同じような嫌味ばっかりだと飽きるのだが。確かこの前は、婚約者とパーティーなどに顔を出さないからきっと婚約者に見放されるわとクスクス笑っていたけれど……おこちゃま達に呆れてそのまま流したんだっけ。

 とはいえ、結局そうなったけれども。

 彼女達は楽しそうにクスクス笑いながら私を見ているけれど、きっとここにはお茶会か何かで呼ばれてきているのだろうからここで油を売っている暇はないのでは?

 ……これ以上この馬鹿げた猿芝居を続ければ、周りの使用人達に自分達の馬鹿さ加減をご披露する事になるだけだが? ここでいつも同じ話ばかりするのだから、自分達が恥ずかしい事をしていると気付くのはいつだろうか。あぁまたあの子達やってるよ、と思われているだろう。

 けれど、自分達で気付かせる時間は全くない。こっちは暇じゃないんだ。


「ご令嬢ももうそんな年なんだから、そんなお遣いなんてしないで早く殿方を見つけないと。お仕事ばっかりしていたら独り身になってしまうでしょう? だから、そんなご令嬢の為にパーティーを開いてあげたいのだけれど……難しいかしら?」

「いえ、どうぞパーティーは皆様でお楽しみください。私は仕事が残っていますので失礼します」

「……えぇ、ごきげんよう」


 はぁ、面倒くさい。実に面倒くさい。こんなやり取りをして一体どこが面白いのか理解に苦しむな。

 ご令嬢は宝石にドレスを好み、そしてパーティーやお茶会で楽しく噂話をするのが当たり前だとよく言われる。けれど、それのどこがいいのか全く理解が出来ない。


『マーフィス嬢もそう思うわよね?』

『えっ、私は……』

『マーフィス嬢?』

『そうよね、マーフィス嬢?』


 自分よりも上の女性達に、全て合わせる。ゴマすりをして、おだてて、空気を読みつつも自分の意見を隠し同意見にする。そんな事をデビュタントで体験し、私は嫌になった。

 騎士団に入った理由は、これだ。建前として、実家が剣の家だから私も剣の道に進みたいと言っているけれど、本音は、こっち。

 令嬢達と意味のないおままごとに付き合わされるのはもう懲り懲り。こんな布の無駄使いのようなドレスを着るのも息苦しい。騎士団の制服の方がだいぶマシだ。

 ひそひそと周りから噂されても、どうってことない。
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