騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

 そして、本城にある近衛騎士団騎士団長執務室に辿り着いた。

 ……辿り着いて、しまった。私はこれからここに入らないといけないんだけど……これは魔王城の扉か? ごぉぉぉ、と効果音が聞こえてくるのだが。

 それについさっき見えた、この扉から出てきた人たちの顔。何やら恐ろしいものでも見たかのような青ざめた顔をしていた。

 あぁ、今すぐにでも帰りたい。けれど、これを持って戻った時に団長がいたら? 鬼と魔王どっちがいい? ……選べん。でも、あとで怖いのは嫌だな。

 意を決して、魔王城の扉をノックした。


「――ふざけるのも大概にしろ」

「ヒッ……」


 ノックした後にそんなドスの利いた声と小さな叫び声が聞こえてきた。一体中で何が起こっているのだろうか。いや、さすがに剣は飛んでこないだろうけれど……命の保証は、あるだろうか……?

 けれど、その後聞こえてきた魔王の「入れ」の声。これを言われてしまえば入らねばならない。殺されるのはごめんだ。とりあえず、ドアを開けて一歩入った。


「……失礼します。第三騎士団所属テレシア・マーフィスです。デカルド団長より書類をお届けに参りました」


 この部屋の主である近衛騎士団長が座る席の前に、二人立っている。私は歩き出してその隣に立ったが……震えあがってる。顔も青ざめているし。あの制服は、どこの部署だろう?


「卿に伝えろ。これ以上は待たない、と」

「はっはいっ!」

「しっ失礼しますっ!」


 そう言い残してそそくさと逃げていった。私を置いていかないで、と言いたいところではあるけれど……魔王からにじみ出るオーラが恐ろしい。

 さっきの声は、まるで鋭い矢が飛んできたような気分だった。本当に鋭かった。そんなものが私の心臓を突き刺したら一発であの世行きだ。それはさすがに避けたい。
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