騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

 そんな時だった。


「おい」


 そう声をかけたのは、顔をあまり見たくないと思っていた私の元婚約者。服装からして、この人も狩りに参加していたのか。果たして何匹仕留められたのか、運動音痴な彼には聞かないほうがいいか。もし一匹も仕留められてなかったら可哀そうだ。

 けれど、これ、と出してきたのは……私が付けていた白のイヤリング。無くなっていた事に今気が付いた。


「落としてたぞ」

「……拾っていただき感謝いたします」

「何でそんなに他人行儀なんだよ。元々婚約者だったろ」


 元婚約者、ね。自分で婚約破棄しておいて、自分から声をかけるなんて一体何を考えているのやら。普通関わらないはずなのに。


「今はもう婚約者ではありません。では子息、このまま速やかにご移動願います」

「お前は? 馬車乗せてやるけど」

「業務中でございますので、お気になさらず」

「ドレスだろ。仕事じゃねぇだろ」

「仕事です」


 舌打ちをし、そのまま去っていった。けれどまさか、私が落としたイヤリングを拾ってくれるとは思わなかった。私が剣を振るっていた時に落としたのだろうか。

 でも、あの人は森の中にいたのに拾うタイミングはあっただろうか。誰かが拾って子息に渡した?

 それに、あの人はこんなにご親切な方だっただろうか。あの人が私に婚約破棄を言い出した理由を思い出すと……怪しい。

 まぁ、もう他人で関係ないんだからいいや。それよりまだ誘導が完了していないのだからそっちに専念しよう。
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