騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

 そもそも、私には男性の知り合いは何人かいるのだが。思った事は全くもってないが、騎士団には貴族の子息達が何人もいる。

 例えば、ウチの副団長も伯爵家の嫡男だし、12歳も年上だがこれくらいは貴族の中では稀なケースではない。……面倒くさがりで何でも押し付ける副団長を結婚相手にだなんて死んでもごめんだが。

 このお坊ちゃんはそれを分からずに言っているようだが、そんな奴が伯爵家嫡男だなんて、伯爵家の未来が心配になってくる。


「もうそんな年なんだから、結婚も考えるべきだろ。マーフィス男爵家の事を思えば、さっさと結婚した方がいいだろ? さっきの安物のドレスよりいいやつを用意してやったんだから、早く来……っ!?」


 そんな時だった。

 私も、この元婚約者も、思いもしなかった人物がいきなり登場したのだ。


「こんの馬鹿息子がっ!!」

「ぶっ……」


 私の目の前にいたはずの元婚約者が、吹っ飛んでいった。本当に、吹っ飛んでいった。そして、殴り飛ばしたお方に引きずられて私の目の前に戻ってきた。

 そんな光景を、私はただ唖然としているだけしか出来なかった。私達の事を見ていた周りの人達も、ヒソヒソ話をぴたりと止めている。


「すまなかったっ!! テレシアっ!!」


 胸ぐらをつかまれ引きずられてきた元婚約者を転がし、そして後頭部を掴んで頭を床に付け半強制的に土下座をさせた……元婚約者のお父上。しかも、そのお父上まで、元婚約者に並び土下座をし始めた。

 隣の元婚約者、鼻は生きているだろうか。だいぶめり込んでいるような……


「この馬鹿が大変迷惑な事をしてしまい申し訳なかったっ……!! 私が目を離したすきにこのような事態をこの愚息がしていたとは、保護者として謝らせてほしいっ……!!」


 迷惑な事、というのはどの事を言っているのだろうか。婚約破棄を白紙に戻してやるというところなのか、そもそも婚約破棄をしてしまった事に対して言っているのだろうか……

 いや、そんな事よりも何故、元婚約者の父である伯爵がここまで、貴族達の集まるこの会場でこんな事をしているのだろうか。上位貴族である伯爵であるならば、もう少し時と場所を選ばなければいけなかった。

 となると、恐らく一刻も早く私に詫びを入れないといけないとでも思ったのだろう。何故? 思い当たる節は……
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