騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!
「……伯爵。父は何と?」
「……」
顔は下げているから表情は分からない。けれど、何となくどんな顔をしているのかは分かる。いや、震えてる。あぁ、やっちまったか……と、悟ってしまった。
「ウチの、可愛い可愛い愛娘を侮辱した罪は、お前達が思っている何億倍も重いぞ……」
「……で?」
「今すぐにでも会いたいところだが、十分に剣の手入れをしてからそちらに赴いてやる。首を洗って待ってろ。鈍っているかもしれないから余計なものまで切ってしまうかもしれないが、文句を言うつもりはないよな? と……」
「あぁ……」
だいぶ、お怒りと見えた。その可愛い愛娘というところをやめてほしいところだが……そうも言っていられない。こちらに来るですって? なんて恐ろしい事をしでかしたんだこの親子は。
「お互い、生き残れることを願っておきます」
「テレシアっ!! 見捨てないでくれっ!!」
「いや、お父様と騎士団時代からの付き合いだったんですよね。何とかしてくださいよ」
「……」
顔を上げた伯爵は……絶望したような、顔面蒼白な様子だった。
お父様とまぁまぁ仲が良かったらしいこの方は、騎士団時代にもお父様にはだいぶお世話になり、困った時にも助けてもらったそうだ。確か、借金の肩代わりまでしてもらって頭が上がらないとまで言っていたような。
その恩返しと言って、男爵家で縁談も貰えなかった娘に縁談話をした。そしてあの婚約が成立した。
だから、この元婚約者に婚約破棄を言い出された時、本当にそんな事をしてしまっていいのかと思いそっちにお父様へのご報告を任せた。伯爵もご存じだと思っていたから。
けれどまさか、こんな事になっていたとは……