騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

 あんなに窮屈なドレスを着たくなくて選んだ、騎士の道。

 それなのにどうして、任務で着なくてはいけないんだ。

 貴重な休みのはずだったのに、あの後急かされて、極秘にブティックに連れてこられた。しかもそこは、前回私が血しぶきで汚してしまったドレスを製作したブティック。近衛騎士団長様は噂通りの悪魔だった。

 案内されたのはとある広い部屋。ソファーとローテーブルがあり、そしてその奥にいくつものマネキンが綺麗なドレスで着飾られて並べられていた。

 任務用のドレスはそちらで用意すると言っていたけれど、まさか今日連れてこられて用意するとは聞かされていない。一言言ってほしかった。というより、何故私の休みを知っているんだこの人は。

 私のスケジュールに私の部屋の鍵にと、さすがと言いたいところではある。文句は言えないのが悔しいが。でも近衛騎士団長様には一生かけても勝てない気がする。

 けれど、私は顔をこわばらせた。この部屋に入ってきた、彼女を見た瞬間に。


「御機嫌よう、ロドリエス侯爵」

「あぁ、ご協力感謝する。マダムサリー」


 あの狩猟大会の交流会でお会いした、あのマダムだった。とても素敵なブロンズヘアーで、綺麗なドレスを身にまとう彼女は、私に柔らかく微笑んでくる。


「ごきげんよう、テレシア嬢」

「ご機嫌麗しゅう、マダムサリー」


 あの狩猟大会で彼女と初めてお話をさせていただいた時の様子は覚えている。王城騎士団員である私の事はあまり良く思っていない様子だった。むしろ、あのご令嬢達と同じ意見のようにも見える。

 今回の任務の協力者の一人らしいマダム。一体どんな協力者なのだろうか。


「では、侯爵はこちらでお待ちください。テレシア嬢はこちらで採寸をいたしましょうか」

「えっ……」


 さ、採寸……?

 確かにドレスを購入しに来たのだけれど、何故マダムが?


「あら、ご存じないの? このブティックの経営者は私なの」


 その言葉で、私は顔をひきつらせた。そういえば、マダムはブティックを経営していると狩猟大会で聞いた。けれどまさか、このブティックだったとは。

 となると、あの狩猟大会でのマダムの会話は一瞬にして意味が変わってしまう。
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