騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!
私の部屋にいたあの方がもし近衛騎士団員だったらどうしよう、と思っていたのに……あろうことか近衛騎士団長。私は悪夢でも見ているのだろうか。いや、悪夢で済むんだったらどれだけよかっただろうか。
近衛騎士団長、リアム・ロドリエス侯爵はとても腕の立つこの国一番の騎士だ。けれど、冷血無慈悲で視線だけで人を殺せると言われている。私は騎士団に入団した時に近くで見たけれど、無表情な人だなというだけだった。
後から先輩達に彼の噂を教えてもらいそんな人だったんだと近づかないようにしていた。まぁ、そもそも顔を合わせる事なんてあまりない。
けれど……さっきの方が、その近衛騎士団長、ですって? 顔は見ていないから、騎士団長に団服を貸してもらった別人……いや、さすがにそれはないか。
曖昧な昨日の記憶。途切れ途切れでしか覚えてない。先輩達と飲んで、べろんべろんに酔っぱらって、自分一人で女子寮が見える辺りまで帰ってきて……
『君、そんな所で寝たら風邪を引くぞ』
って、言われたような……そこからは曖昧で……
『ど~せ私は女っ気のない男女ですよ~……』
『……』
『何よ、アンタもそう思ってるんでしょ!』
……やばいな。私、何て事言ってんだ。
土下座、するべきか。さすがに騎士団をクビだけは……勘弁してほしい。
「どうした、テレシア。そんなげっそりして」
「……二日酔いちょっと辛いです」
「あ~分かる分かる。無理すんなよ」
「ありがとうございます、先輩」
うん。色々と悪夢がきてもう私どうしたらいいか分からない。助けて、誰か。
と、誰かに助けを求めていた時だった。