騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

「ではよろしく頼むよ、第〝三〟騎士団員の皆さん」


 そんな、大きめの声が事務室に響きこちらにまで聞こえてきた。そちらに視線を向けると、青い制服を着た騎士団員が帰っていったところが見えた。

 青い制服、というと第二騎士団員だ。いやな予感が、するのだが。


「はぁ!?」

「はぁ、あの野郎……さっさと持ってくればいいものを……わざとか」

「やってくれるな。第二も第三も一緒だろーが!」


 あの人が何かを持ってきたらしい。テーブルに見覚えのないタワーがあるんだけれど、恐らく資料か何か。一体何cmのタワーになってるのよ。そう思いつつ、先輩達の間から覗くと……絶句してしまった。今日終わる? これ、数字の羅列? はぁ、数字の計算なんて私苦手なんですけど……

 騎士団の中で、第二騎士団とウチの第三騎士団の仲の悪さはどうしたものかと思ってはいる。この王城での騎士団は4つ。第一、第二、第三騎士団があり、その上に近衛騎士団がある。

 近衛騎士団はだいぶ格上で、その他は団員一人一人の実力をバランス良く配置されている。数字の上下は実力に関係ないのだ。それは向こうも分かってるはずなのに、こうして見下してくる。はぁ、本当にやめてほしい。

 しかも、これを持ってきたのはうちの団長が会議とかで執務室にいない時。いつもそうだ。


「これ、いつ終わるんだ?」

「今日は帰れないよな」

「はぁ、何してくれてるんだよ」


 第三騎士団にも、班がある。私は1班で今日は雑務係。だから1班のメンバーでこれを終わらせなくてはいけないのだけれど、もう夕方だから全て終わらせるとなると徹夜になる。まぁ、それはざらにあるけれど……思い出した。


『今夜もそちらに行ってもいいか』


 という言葉を。

 ……いや、私はただの下っ端。相手はお偉いエリート騎士団の騎士団長。どうせ私がいなかったら何も思わず帰るに決まってる。それに、そもそも来ること自体が間違っているんだから。


「ほらテレシア、お前はこっちな」

「はいっ!」


 とりあえず、目の前の仕事を何とかしよう。……私はこの数字の羅列と戦わねば。

< 8 / 124 >

この作品をシェア

pagetop