騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!
「パーティー会場に入ってから、そちらで処理するとのことでしたが……」
「あぁ、君は私達を潜入させるための協力者だ。潜入後私と別れ、君は他の騎士団員達を潜入させるために窓を開けてほしい。その後休憩室の鍵を閉めて待機してくれ。完了次第合流後屋敷を出る」
事務室で言われていた通りだ。誰か休憩室にいる可能性はあるけれど、その場合団長様が何とかしてくれるらしい。
けれど……
「……私、端くれではありますけど、一応騎士です。潜入後、私にも出来る事はありますでしょうか」
近衛騎士団はエリート集団。こんな私では足手纏いになってしまうのは分かってる。けれど、どうして……もっとこの人の役に立ちたいだなんて思ってしまったのだろう。
下っ端の騎士団員が、何言ってるんだろう。おこがましいにもほどがある。
「……いや、君を危険にさらしたくはない。自分が騎士だという事を悟られないよう振る舞ってくれれば、それで十分だ」
そう、だよね。何出しゃばってるんだろ、私。自分が選ばれたからって調子乗ってるって思われちゃったかな。それは、嫌だな。
「私が戻ってくるまで、いい子で待っていてくれ」
そう言って、私の頭を撫でてくる。
近衛騎士団長。我が王国の軍事力を管理している存在。そんな方が、目の前にいる。そんな方の役に立つだなんて、無理に決まってる、か。私はただの協力者。そう、ただ唯一の女性騎士団員が私だったから、協力者として挙がっただけ。
「それより、今日の君はいつも以上に魅力的だ。きっと周りの男共に目を付けられてしまうだろう。だが、何を言われたとしてもちゃんと断ってくれ」
「えっ」
「君は私のものなんだ、手を出されては困る」
そう言って頬を撫でてきた。
私は、団長様のもの、か。確かに、今日のパートナーは私。何事もなくスムーズに会場を出ないといけない。
「お任せください。何事もなく任務を完了出来るよう私も最善を尽くします」
「テレシア……そうではないんだが、分かってもらうには時間がないようだな」
その声と共に、馬車が停まった。降りなくては、と思っていた時、団長様がいきなりキスをしてきたのだ。
「今すぐにでも分からせたいところだが、任務では仕方ない。……――後で覚えておいてくれ」
そんな囁きに、何を言っているのか分からなくても何故か顔が火照ってしまった。さっき手渡してくれた、目元だけ隠す白い仮面で顔を隠そうとしたけれど、こんなもので隠せるなんて事、出来るわけがない。