一夜限りの結婚式~君と愛し合えた日々は、本当に幸せでした。
 朝、シーツの擦れる音がして目が覚める。柊くんがベッドから出ていく気配を背中で感じた。着替える音やキャリーケースを閉める音も……柊くんは私に気遣いながら静かに、帰る準備を進めていた。

「柊くん、おはよう」

 私はベッドの上に座り、柊くんに声をかける。

「あ、起こしちゃった?」
「もう、起きてた。柊くん、もう帰るの?」
「うん」

 それぞれ別々に、好きなタイミングで帰ろうと柊くんに提案されていた。本当は一緒に帰りたかったけれど、柊くんが「この思い出の場所で、僕達の関係を本当に終わらそう」って。私は柊くんがこの部屋を出てから、一緒に過ごした余韻に浸り、しばらく経ってから帰ろうと思う。

今回の旅行の後は、もう会わずに過ごそうって約束もした。お互いがそれぞれ別々の道を進めるように――。

「じゃあ、行くね」
「うん、柊くんが幸せに生きていられますように」
「伊織も、幸せな人生過ごせますように」

 柊くんは別れの扉を開けた。

「柊くん、またいつでも私の隣に戻ってきてもいいから。どんな柊くんでも、いつでも……。本当に戻ってきていいからね」

 上手く言えなかったけれど、別れ際に伝えたいことを伝えられた。だけど柊くんはその言葉に返事はしなかった。

 私に背中を向けながら「サヨナラ」と呟く彼。
 私は彼の背中に向けて「サヨナラ」と言った。

 ドアが閉じる時の音がとても大きく感じる。
 本当にふたりの関係は終わってしまった。

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