一夜限りの結婚式~君と愛し合えた日々は、本当に幸せでした。
 旅行に行く少し前、珍しく柊くんの母親にランチに誘われた。もう別れて別々に暮らしていることも伝えたけれど、その時、柊くんが私に秘密にしていたことを話してくれた。

柊くんが病気を患っていて、あと数年生きられるか分からないってこと。そして悪化したら必ず私に迷惑をかける日が来るから、別れるか悩んでいたこと。

 その話を聞いた時、柊くんが病気なのが信じられない気持ちと共に、どこまで私に対して優しいんだよって思った。そして何故柊くんは私に打ち明けてくれないんだって悔しさのような気持ちも込み上げてきた。

あらためて柊くんと一緒に暮らしていた時のことを思い出すと「疲れた」って言いながら、起きてこない日もあった。仕事で疲れたのかなって感じてたけれど。違うかもしれないけれど、それも病気のせいだったんじゃないか?って。もっと労わって、話を聞いて……柊くんに色々もっとできたんじゃないか? 柊くんが心の内を打ち明けやすいように、もっと自分から心を通わせられたんじゃないか?って。今更後悔の念に駆られる。

――考えてみれば、この十年間、私だけ心の内を明かしていた気がする。

「実は病気のことを知っていたんだよ」って、柊くんに何度も言いたくなった。だけど、隠し通そうとする姿を見ていると、言えなくて。それも今後の私の幸せを考えてしてるんだって気がついていた。

 でもね、最後まで打ち明けてくれなくて、正直少し寂しい気持ちもあるかな――。

「そっか、その人と、上手くいくといいね。じゃあ、おやすみ」

 そう言うと私は再び彼に背を向けて、目を閉じた。
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