騎士団長の一途な愛は十年目もすれ違う
「それで第一部隊への異動っていうのは、どういうこと?」
「第一部隊の砦は王都の外壁近くにある。一緒に住んでも、チェルシーは保健医をやめなくてもいい」

 卒業間近、クレイグはチェルシーに言った。同じ部隊を目指さないか、チェルシーは看護隊として。だけどチェルシーは保健医でいることに決めた。彼女は未来の騎士を送り出すことを夢としていた。
 
「クレイグの休暇が少ないのって、そのためだった? 第一部隊って……大変だったでしょう」
「まあ……そうだな。十年以内に間に合わせようと思った。チェルシーは結婚を急いでいるから正直焦ったが……。数日前にようやく希望も通った」

 これですべての疑問はとけた。
 それと同時にチェルシーの胸に満ちあふれるものがある。
 不器用すぎるけれど、そういう人だから好きになったのだと。
 十年後の二人の未来に向けて、ただ必死に彼は進んでいてくれたのだ。

「これで本当に私たち、もう恋人でいいんだよね?」
「……できれば婚約者だと思ってほしいが」
「へへ、そうだった。ありがとう」
 
 チェルシーの瞳から涙がこぼれはじめて、クレイグはもう一度しっかり抱きしめた。
 彼女の涙をすくってやり、大きな手でチェルシーの頭を撫でる。

「こうすると、女性は嬉しいと聞いたんだが大丈夫だろうか」

 不安そうにのぞき込むクレイグに笑ってしまう。外では恐れられる団長なのに、子どものような恋愛だ。
 なんといっても、数分言葉を交わすだけで数年がんばれてしまう人なのだから。

「そういうことは確認しない方が女性はときめくんだよ」

 クレイグの腕の中でチェルシーがくすくす笑うと、クレイグの太い指がチェルシーの顎を捕らえる。
 簡単に彼女の顔は上向かされ、キスが落ちてくる。

「ちょ、ちょっと待って……不意打ちは」
 子どものような恋から始めると思っていたチェルシーは目を見開いた。
 
「待たない。チェルシーも何も言わない方がいいと言った」

 チェルシーの抗議の声は唇でふさがれた。赤い耳は長い指にくすぐられていく。団員たちは一体どこまで彼に教えたのだろう。
 九年分の愛はもう我慢する必要もなければ、確認もいらないと言ったのだ。クレイグは止める気はなかった。
 幸い休暇は二日あり、今夜もずっと一緒にいられるのだから。
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