婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。
紅真の冷ややかな視線と圧力のある低い声に、流石の華枝も黙りこくる。
菜花は嵌められたばかりのリングを見つめてから、華枝の方に向かって真っ直ぐ歩み寄った。
「華枝さん、あなたの言っていたことは正しいです。私は春海グループの娘でなかったら紅真くんと出会うこともなかったと思います」
「……!」
「華枝さんのように華道に詳しいわけじゃない。でも、誰にも負けないくらい紅真くんを愛している自信はあります」
華枝の目を見て、はっきりと言い切った。
「これからは妻として紅真くんを支えていきます。まだまだ未熟者ですが、これからもよろしくお願いします」
菜花はそう言って華枝に頭を下げた。
華枝は苦虫を噛み潰したような表情で、震えていた。
紅真が自分に自信をくれた。
左薬指のリングが勇気をくれた。
ありのままの菜花を愛してくれる紅真のためにも、自信を持ちたい。
華枝が珠沙流師範代である以上、きっと華枝との縁が切れることはない。
だからこそ、立場をはっきりさせたい。
これは菜花の宣戦布告だった。
「〜〜っ、何なのよ……姉妹揃ってムカつくんだから……っ!」
「姉妹?」
その時、この場に場違いな程のんびりとした声が響き渡る。
「菜花〜、ここにいたのねぇ」