婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。
菜花に駆け寄ってきたのはかすみと菊川だった。
「春海!」
「菜花、見たよ!」
「あ……」
菜花は一瞬視線が泳いでしまった。
入社当時からずっと仲の良い同期だったのに、ずっと話せずにいた。
いつか話したいと思いつつ、こんな形で知られてしまったことが申し訳なかった。
「あの、私……」
「公開プロポーズって本当なの!?」
「え、うん」
「いいな~~!!」
かすみは羨ましそうに声をあげる。
「私もされてみたい~」
「かすみ、結婚しよう」
「なんで今なのよ!」
冗談なのか本気なのかわからないじゃれ合いに、思わずポカンとしてしまう。
「……二人とも、黙ってたこと怒らないの?」
「なんで怒るんだよ。そりゃ最初見た時はびっくりしたけどさ」
「相手が千寿次期家元じゃ言えないよね~」
「つーか、春海ってお嬢様だったんだ。全然見えないな」
「菊川、それ失礼!」
「ううん、すごく嬉しい」
菜花はふるふると首を横に振る。
「春海グループの娘ってだけで色々言われるから、会社では言いたくなくて。でもかすみと菊ちゃんに黙ってるのはずっと心苦しくて」
「菜花~!」
かすみは菜花にぎゅうっと抱きつく。
「大丈夫だよ。どこの誰であろうと、菜花は菜花だもん」
「そうそう。今更変わらないって」
「かすみ、菊ちゃん……ありがとう」
思わず目頭が熱くなった。
ずっと心にあったしこりのようなものが取れたと思った。