婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。
菜花のリングを見て興奮したりしながら今度ゆっくり話を聞かせてね、と言われて二人とは別れた。
そして企画部のフロアに行くと、「おめでとう!」と温かく祝福してくれた。
みんな菜花の結婚を喜んでくれて、改めて良い職場に恵まれたことに感謝した。
「良かったな、春海」
「! 部長……」
赤瀬は至っていつも通りだった。
他の社員たちに混じり、自然な雰囲気で接してくれる。
これが赤瀬の優しさなのだと思った。
「赤瀬部長、後でお話があります。お時間いただけますか?」
だから菜花も真摯に向き合いたいと思ったのだ。
「……わかった」
赤瀬も何かを察したのだろう。
二人の間に二人にしかわからない緊張感が走る。
(大丈夫、ちゃんと話せる)
菜花は自分のデスクで呼吸を整える。
まずは目の前の業務に集中しようと一旦頭を切り替えた。
やはりクーラーが少し肌寒いので、持ってきたカーディガンを羽織った。
(あれ……? 紅真くんの匂いがする?)
カーディガンから今朝嗅いだばかりの石鹸の香りがする。
恐らく紅真の匂いが移ったのだろうと思ってあまり気にしなかった。
とにかく今は仕事に集中しようと思った。
就業時間後、会議室に呼ばれた。
菜花が入るなり、赤瀬は菜花に優しく微笑んだ。
「改めて、おめでとう」
「ありがとう、ございます」