婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。


 何とか紅真を宥めて止めたが、ものすごく不満そうだ。

 実はあのメッセージには続きがあった。

「P.S. 何かあったらいつでも待ってる
 パリには知り合いもいるから、何かあれば頼れよ」

 いずれは紅真についてパリに行くという話もしていたので、背中を押してくれているメッセージなのだろう。
 最後まで読むと、紅真は肩を落とした。


「ごめん。こんなだから、蘭に散々ダメ出しされるんだよね」
「うーん、そうなのかも?」
「普通は赤瀬さんみたいな大人で頼り甲斐のある人の方がいいよね」


 明らかに拗ねている紅真がかわいい。
 正直に言えば、紅真が嫉妬してくれるのは嬉しかったりする。


「重いしめんどくさいと思われるかもしれないけど、それでも僕は菜花がいいから離してあげられないと思う」
「うん、離さないで。私も紅真くんから離れるつもりなんかないよ」


 菜花は紅真の手を取り、真っ直ぐ見つめる。


「私の方こそこれからもよろしくね」
「菜花……」


 紅真はぎゅうっと菜花を包み込むように抱きしめる。


「言葉にすることが大事なんだって気づいたから、これからもちゃんと伝える。愛してるよ、菜花」
「私も。紅真くんのこと愛してる」


 この日を迎えるまで遠回りをしてしまった。
 それでも全てはこの日に繋がっているのだとしたら、一つも無駄なことなんてなかったと思える。
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