不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

プロローグ

「瑞希、ちゃんと覚えているだろうな?」

 艶のある低い声が鼓膜をくすぐり、私は首をすくめた。
 黒い前髪が落ちかかり、色気のある視線が私の胸を貫く。
 ベッドのうえで、Tシャツとショーツしか身に着けていない私は、黒瀬さんに顎を掴まれ覗き込まれていた。

(どういう状況?)

 寝起きで急に言われたのでなんのことだかわからなくて、きょとんとする。
 そんな私の唇を親指でゆっくり辿って、彼は淫靡に笑った。

「襲ってもいいんだろ?」

 息がかかる距離でささやかれて、かぁっと頬が熱を持つ。
 整った顔が近すぎて、どこに視線を向けたらいいのかわからない。
 
(そういえば、寝る前にそんなことを言っちゃったかも……?)
 
 まだ眠りの残るぼんやりとした頭で考える。

「ちゃんと言ったことに責任とれよ」

 私が覚えているのがわかったようで、ニヤッとした彼は私に口づけた。
 唇を押しつけられて、口の周りにチクチクと無精髭が当たる。角度を変えてついばまれる。

(待って待って! 私、黒瀬さんとキスしてる!?)

 驚きにはっきり目が覚めた。
 うろたえる私の唇に彼は吸いついてきて、離れるときにふにっと唇を挟むように食んだ。
 それがやけに気持ちよくて――。
 
(この人とだけはないと思っていたのに、どうしてこんなことに!?)

 彼の上手なキスに翻弄されながら、私は心の中で叫んだ。
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