玉響の花霞    弍
はぁ‥‥
ローヒールならまだしも、仕事用とはいえ5センチのヒールの靴での階段は
流石にキツかった。


話しながらゆっくりしてしまったから、
途中からエレベーターで降りよう‥‥。


『あのさ‥‥もし良かったら
 金曜日、仕事が終わったらご飯でも
 行かない?もし2人きりが無理なら
 犬塚と杉浦も誘ってみんなとでも
 いいから。』


「はい‥‥2人きりは緊張するので、
 菖蒲たちとなら是非。」


『うん、じゃあ声かけてみるよ。
 それじゃあまた。』



立田さんに誘われて、
少しだけ変に意識をしてしまったけど、
みんなとなら楽しそうだから
金曜日が少し楽しみになった。



ガチャ


『うわっ!霞ちゃんじゃん、
 ビックリしたぁ。』


7階の非常口を開けたら、すぐ横で
蓮見さんと筒井さんがいて、私も
ビックリしてしまった。


どうしよう‥‥
ここまでドアを開けておいてやっぱり
階段で降りるなんて不自然だし、
行くしかないよね‥


「お疲れ様です。ちょっと運動を‥」


『運動って‥その格好でストイック
 だね。』


ほんとそうですよね‥‥
自分でもエレベーターで降りれば
良かったって思ってます。


『今日は下まで行かなかったんだな‥
 風邪引くなよ?』


ドクン


「えっ?‥‥あ‥じ、時間が足りなくて
 ‥‥また頑張ります。」




前を通る時にちゃんと普通に
接してくれただけで胸が切なくなる


仕事だって分かってるし、
割り切って過ごしてきたけど、
優しい声を聞くだけで1日仕事が
頑張れるくらい元気まで貰えてしまう



『霞ちゃんまたね。』


「はい、お疲れ様です。」


お辞儀をしてから、
エレベーターホールに向かい乗り込み
下まで行くと、佐藤さんと交代をして
午後の業務をし始めた。



オフで筒井さんに会うことはないから、
毎日会えなくても、偶然でもいいから
ああして顔を見れると嬉しい‥‥



アルバイトをしていた頃に比べたら、
同じ片思いでも、会話ができるだけ
スタートが違う


他の人に目を向けられたらきっと
もっとラクになれるって分かってる。
でも人を好きになるのは、理屈じゃない
から仕方ない‥‥


たった一言でもわたしの心が
締め付けられるのはただ1人。
この気持ちが変わる日なんて
いつか訪れるのだろうか‥‥



「お待たせしました。」
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