奈落の悪役メイドは孤高の御曹司に求愛される
「うちのお母さん、すごく暑がりでさ。エアコンいつも何度に設定してると思う?」

「うーん……22度くらい?」

「もっと下。18」



はぁ、と溜め息をついた入江くん。不満を含んだ眼差しが運転席へと向けられる。



「電気代はかさむし、おまけに汗っかきだから水道代もかかるし」

「しょうがないでしょう。体質なんだから。これでも扇風機使ったり保冷剤当てたりしてるのよ?」

「だったらせめて20度にしてよ。この際だから言うけど、みんな困惑してるからね? こないだも『あんな冷凍庫みたいなところで平気なの!?』って、朱李(しゅり)ちゃんビックリしてたんだよ」



うん、そうだね。本人にとっては快適でも、あまりにも寒すぎると体調崩さないのかなって心配になるよね。

次から次へと出てくる苦情に静かに頷いていたら、再び彼が後部座席を覗き込んできた。



「乃蒼ちゃんは暑がり? 寒がり?」

「寒がり。だから夏でも長袖が欠かせなくて。学校でも冷房が強い時はカーディガン着てる。でも、毛布にくるまりはしないかな」

「ほらぁ、りきが異常に寒がりなのよ」

「いやいや、お母さんも異常だから。また言い訳したら暑がり雪女って呼ぼうかな」

「やだっ、失礼ね。ならお母さんは寒がりヴァンパイアって呼んじゃおうかしら」



思わず吹き出しそうになったのを、口をギュッと一文字に結んでこらえる。


日本の妖怪に外国の怪物。しかもどちらとも少し雰囲気が似てるところがまた……。

……やっぱり自分の遺伝子を色濃く引き継いでいると愛着が湧くんだな。


おしゃべりする2人に微笑ましさを感じたと同時に、少し複雑な思いを抱いた。
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