聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

 ドアがノックされ、ベルナル先生の顔が覗いた。

「学院長、朝食の用意ができたそうです……おっ、皆さん起きましたか」
「ルーカス君は少し眠ってからにしますか?」

 学院長は気遣ってそう訊いてくれたが、ルーカスは少しも疲れを感じてはいなかった。
 椅子の上で数時間眠っただけにも拘らずだ。
 マルティーナの治癒魔法のお陰であることは疑いようがなかった。

「一緒に食堂へ行きます」
「そうですか。マルティーナ君は? 起き上がれそうですか?」

 返事が聞こえてこない。
 しかし、マルティーナはぼうっとしているのではなかった。
 手のひらを閉じたり開いたり、裏返してみたりと、ためつすがめつしていた。

(僕をアーロンの名で呼んだことは覚えているだろうか?)
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