モイラ --天使が犯した罪と罰--
「センパイ、強いねー」
「……ごほっ、ッ…!」
エリスはもう一度私の首を絞めようとするが、諦めたのか私の頬をそっと撫でた。
愛おしいものを撫でるようなその手付きに、私は恐怖を覚える。
「可愛い」
そう呟いたエリスの目は、まるで獲物を刈るかのように、禍々しく淀んでいる。
私はその瞳を、直視することは出来なかった。
見てしまってはいけないと、本能でそう思ってしまったから。
「見てよ、僕の目」
しかしエリスには逆らえず、ぐっと顔を掴まれ、私は正面を向かされる。
「見ろ」
カタカタと震える肩を、私は落ち着かせることに必死であり、過呼吸気味となる。
「僕は“災いの天使”。
この世に災いを起こす、“ならず者”はいらない」
「………っ…」
「僕の力と温度、分かるんでしょ?
なら、“ならず者”だ。
人間のクセに、天使の感触が分かるのだから」
私が知っているエリスは…。
意地が悪く、腹黒な所があって、でも素直だととても可愛くて……。
こんなにも恐怖を与える存在だとは、到底思えない。