モイラ --天使が犯した罪と罰--



「“分離手術で命が危ぶまれた片割れの心臓を、別の人間に移植する”。
結合双生児の間で希望していたことだったみたいだね。
まあ……実際に心臓移植が行われたなんて予想外だったけどね…」



手のひらに置かれた海色のブローチは、“ヘメラ”の心臓を移植され、数日後に亡くなった患者のものだとクロイは語る。


ブローチをクロイが受け継いだからには、その患者と彼に密な関係があるのは確かだった。


クロイは何をどこまで知っていて、何を体験したのだろうか。



「その、心臓移植をして亡くなった方は、クロイさんにとってどんな人だったんですか?」



心の中で、“どうか違ってください”と願う自分がいた。


クロイの心の傷を覗くような感覚に陥って、自分も彼もおかしくなってしまいそうだったから。



「彼女」



しかしクロイは私の思惑とは反対に、窓辺に写る景色を見つめながら、遠い瞳をしてそう告げた。



「彼女だよ、恋人。
世界で一番大好きな人、愛してる人、いやそれ以上かもしれない」


「クロイさん……」


「守れなかった、治してすらやれなかった。
ずっとずっと俺は後悔してるんだ。


なのにいきなり、君が現れるから──」



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