プレイボール
放課後、僕は約束していたグラウンドのベンチに向かった。
僕以外がすでに集まってるようだ。
「ごめん、遅れた」
僕は皆んなの方を向いて頭を下げる。
「いいから、いいから」
そういってベンチに座っている仁太が隣に座るよう促す。
九条さんも僕と反対側の仁太の隣に座っているが、相変わらず玲子さんは僕たちの向かい側に立っている。
「さて、勧誘する人を決めるわよ!!といっても既に私が候補をこの中から1人は決めたから、残りは後1人なんだけど。。」
そう言って玲子さんがアンケートの用紙が入っているであろう箱を右手に抱えながら言う。
「ねえ、1人はどうやって決めたの?」
九条さんが相変わらず遠慮がちに問う。
「そうね。。まずは、仁太!あんたはさすがだわ!あんたが問題用紙を作ったわよね。そこから解説してもらえる?問題を提供したのは九条だろうけど、これは九条のセンスではないわね。」
玲子さんは涼しげに仁太に言う。
九条さんも特に異論はないようで、肩をすくめて仁太の方を見る。
「そうだね。九条さんには面白いと思った問題をいくつか提供してもらったんだ。【問題1】について、一郎くんだったらどう答える?」
仁太は僕に回答するよう促す。
僕は玲子さん抱えていた箱の中から1枚の未回答のアンケート用紙を取り出して問題を見て答える。
【問題1】
高校野球の試合で、ピッチャーが140km/hの速さでボールを投げました。
このボールがバッターから18.44m離れたホームプレートに一直線に進むとします。
(1)ボールがホームプレートに到達するまでの時間を求めなさい。
(2)もしバッターがホームランを打ち、ボールが打球速度150km/hで、打ち出し角度30°で飛んだとします。
「そうだな。僕なら⑴は普通に距離➗速さで時間を求めるかな。
単位の変換をして、18.44➗38.89≒0.474秒ってとこかな。」
果たして途中式をすっ飛ばしたが伝わっているだろうかと思いながら僕は答える。
「そう、そうだよね!それが普通の答え。
きっと⑵でも同じように公式にあてはめて計算して153.3mと答えるでしょ。」
仁太が当たり前のように答える。やっぱりこの学校は皆んな勉強はできるようだ。
「ほとんどの回答は皆んな同じでその通り。これは物理の問題。だけど答えは本当にそうだと思う?」
仁太が少し得意げに話を続ける。
「実際に九条さんから提供してもらった問題集の中でも回答はそうなっている。でも本当にそうなのかなって言うのが僕の考え。ボールの材質や、金属バットの反発係数、何より空気抵抗について触れていない。
本当の問題には注意書きにこれらを加味しないってなってるんだけど、あえて外してみたんだ。」
そこまで言って、仁太は玲子さんの方に目くばせをする。
玲子さんは視線を受け取ったようで、続けて答える。
「そうみたいね。で回答をざっとチェックしたら、2人だけみんなの回答とは違ったのがあったのよ。」
玲子さんは嬉しそうに言う。
けど確か、さっき玲子さんは候補は1人しか見つかっていないようなことを言っていなかったけ。
確かめるように僕は問う。
「では、その皆と違う回答した人を野球部に招くということですね。
2人いたようでしたけど、、」
「そう、2人いたのよ。でも残念ながら1人は名前を書いていなかった。
ぜひ、見つけ次第勧誘してほしいわ。これは、今後の課題ね。
ちなみに名前を書いたもう1人は一郎君とは親しいみたいよ。」
玲子さんはそう言って僕を見る。
僕は思い返してみるが仁太以外に友達と呼べる人を全く思い浮かばない。
「回答内容も面白かったわ」
玲子さんはそう言って回答用紙を僕らに見せる。
問1(2)
答え:空気抵抗、マグナム効果、反発係数によって160km〜130km以下になる。
・・・・
なるほど、僕はびっしり答えの書いてある答案用紙を手にとって見る。
追い風5m/sの場合、など様々な仮定でシミュレーションの結果が書いてある。
さすがの僕も読み解けない途中式がある。しかもこれって高校生で習わない公式のような。。
僕が一生懸命数式の意味を解こうと頭を抱えていると、向いから玲子さんが回答用紙を奪う。
「もう、何本気で解こうとしてるのよ。これはテストなのよ。
本当に正解かなんてどうでもいいのよ。」
玲子さんが呆れたように言う。
「なるほど、つい解こうとしてしまいました。
要は、より実践的な考え方ができるかどうかと言うことを見たかったのですね。」
僕がそう答えると、玲子さんはさらに呆れたように言う。
「まあ、一郎君にはそう取ってもらって構わないわ。
本質的なことを答えられるかどうか。質問者の意図を汲んでくるかどうかを測りたかったのよ。」
玲子さんがここまで言うと仁太が横から入ってきて言う。
「うん、さすがだと思うよ。少なくても野球がどういうスポーツなのかはわかっていることになるしね。
僕がもし野球を知るまえにこの問題に出会っていたら反発係数とか答えられなかったよ。どんなボールなのか
イメージもつけなかっただろうね。」
「仁太さんって、本当に野球についてはあまり知らないのですね。」
九条さんが控えめに言う。
「まあ、そんなことより一郎君の友達なんでしょ!その人」
仁太が僕と玲子さんを交互に見る。
僕は首を傾げて玲子さんを見る。
「どうだかね。本人がそこまで考えて思い浮かばないのであれば違うのかも。
でも、用紙の【問題2】あなたの友人の名前を1人書きなさい。では一郎君、君の名前が書かれていたわ。」
そう言ってもう一度回答用紙を皆に見せる。
あー、思い出した。確か、隣の席の渡辺八尋から名前を貸してほしいと言われたんだっけ。
僕は納得するように名前を貸しただけと説明する。
「なるほど、それでもさすがだわ。君の名前を書くなんてセンスあるわね。
ま、とにかく5人目の部員はその八尋君って人ね。私から改めて勧誘するわ。」
そう言って回答用紙を箱にしまう。
「あ、あのう、もう1人、名前を書いていなかったその人はなんて回答したの?」
九条さんが問う。
「うん、これはまた八尋君とは違ったタイプで面白い回答だったわ。」
そう言って玲子さんは再び箱の中からゴソゴソと探し出して1枚の回答用紙を僕らに見せる。
【問題1】
・・・
(1)回答:実際には0.47秒より遅くなる。
(2)回答:やってみないと分からない。
なるほど、、確かにこの人も色々理解しての回答ということか。
「名前わかったら勧誘できたのに。。」
そう九条さんが残念そうに言う。だけど仁太と玲子さんはそこまで気にしていないようだ。
「そうだね、九条さんの言うとおり名前が書いてあったらよかった。
でもきっとこの人は自分の名前を書きたくない何らかの理由があったのかもしれない。
それに、そのために【問題2】を入れたんだよ。」
仁太がそう言うのをきてなるほど、と思う。
友達から探ると言うことか。
「ちなみに、友達の名前はなんだったの?」
僕が仁太に尋ねると、横から玲子さんが答える。
「三田陸っていう人よ。誰か知ってる?」
玲子さんの問いに僕は頷く。
「僕と同部屋の人だ。」
「だったら話は早いわね。まずはその三田陸君を勧誘するのね。
それから彼の友人を探って、一緒に入部してもらうのよ。これで部員は全部で7人になるわ。」
玲子さんはそう簡単にいうが、そもそもあの三ちゃんが野球に興味があるのか微妙だ。
「はあ、まあ一応誘ってはみます。」
僕は一応返事はしてみる。あまり自信がないのが伝わったのか、仁太が心配そうな声で言う。
「一郎君、がんばっって!きっとうまくいくよ。」
仁太に言われてなんか調子狂う。アホっぽいというか。。
しかしこの問題を作ったのも仁太なんだから信じられない。いいやつなのだが。
そうこうしているうちに日も暮れてきてそろそろお開きにしようということになった。
僕は三ちゃんを野球部に勧誘すること、そして玲子さんは仁太と一緒に八尋を勧誘することになった。
これにはホッとしている。もしかして【問題2】に僕の名前が書いてあったから僕が勧誘しなければならないと思ったのだ。
だけど、八尋にはきっと生徒会から勧誘された方がいいと言うことで玲子さんが一役買ってくれることになったのだ。
どうしたって僕は八尋とは親しい友達にまではなれていなかったから助かったのだ。
それに、野球に興味があると言うより、抽選の特典の方が気になっていたみたいだから。
僕らは明後日の水曜日にもう一度ここで集まることにして今日はお開きになった。
次集まるときは2人増えている目算だそうだ。
さあ、寮に帰って三ちゃんにどう切り出そうかな。
そんことを考えながらすぐ近くの寮へ歩いて帰る。
なんだかんだで野球部を作るのに前向きになっている僕がいた。
僕以外がすでに集まってるようだ。
「ごめん、遅れた」
僕は皆んなの方を向いて頭を下げる。
「いいから、いいから」
そういってベンチに座っている仁太が隣に座るよう促す。
九条さんも僕と反対側の仁太の隣に座っているが、相変わらず玲子さんは僕たちの向かい側に立っている。
「さて、勧誘する人を決めるわよ!!といっても既に私が候補をこの中から1人は決めたから、残りは後1人なんだけど。。」
そう言って玲子さんがアンケートの用紙が入っているであろう箱を右手に抱えながら言う。
「ねえ、1人はどうやって決めたの?」
九条さんが相変わらず遠慮がちに問う。
「そうね。。まずは、仁太!あんたはさすがだわ!あんたが問題用紙を作ったわよね。そこから解説してもらえる?問題を提供したのは九条だろうけど、これは九条のセンスではないわね。」
玲子さんは涼しげに仁太に言う。
九条さんも特に異論はないようで、肩をすくめて仁太の方を見る。
「そうだね。九条さんには面白いと思った問題をいくつか提供してもらったんだ。【問題1】について、一郎くんだったらどう答える?」
仁太は僕に回答するよう促す。
僕は玲子さん抱えていた箱の中から1枚の未回答のアンケート用紙を取り出して問題を見て答える。
【問題1】
高校野球の試合で、ピッチャーが140km/hの速さでボールを投げました。
このボールがバッターから18.44m離れたホームプレートに一直線に進むとします。
(1)ボールがホームプレートに到達するまでの時間を求めなさい。
(2)もしバッターがホームランを打ち、ボールが打球速度150km/hで、打ち出し角度30°で飛んだとします。
「そうだな。僕なら⑴は普通に距離➗速さで時間を求めるかな。
単位の変換をして、18.44➗38.89≒0.474秒ってとこかな。」
果たして途中式をすっ飛ばしたが伝わっているだろうかと思いながら僕は答える。
「そう、そうだよね!それが普通の答え。
きっと⑵でも同じように公式にあてはめて計算して153.3mと答えるでしょ。」
仁太が当たり前のように答える。やっぱりこの学校は皆んな勉強はできるようだ。
「ほとんどの回答は皆んな同じでその通り。これは物理の問題。だけど答えは本当にそうだと思う?」
仁太が少し得意げに話を続ける。
「実際に九条さんから提供してもらった問題集の中でも回答はそうなっている。でも本当にそうなのかなって言うのが僕の考え。ボールの材質や、金属バットの反発係数、何より空気抵抗について触れていない。
本当の問題には注意書きにこれらを加味しないってなってるんだけど、あえて外してみたんだ。」
そこまで言って、仁太は玲子さんの方に目くばせをする。
玲子さんは視線を受け取ったようで、続けて答える。
「そうみたいね。で回答をざっとチェックしたら、2人だけみんなの回答とは違ったのがあったのよ。」
玲子さんは嬉しそうに言う。
けど確か、さっき玲子さんは候補は1人しか見つかっていないようなことを言っていなかったけ。
確かめるように僕は問う。
「では、その皆と違う回答した人を野球部に招くということですね。
2人いたようでしたけど、、」
「そう、2人いたのよ。でも残念ながら1人は名前を書いていなかった。
ぜひ、見つけ次第勧誘してほしいわ。これは、今後の課題ね。
ちなみに名前を書いたもう1人は一郎君とは親しいみたいよ。」
玲子さんはそう言って僕を見る。
僕は思い返してみるが仁太以外に友達と呼べる人を全く思い浮かばない。
「回答内容も面白かったわ」
玲子さんはそう言って回答用紙を僕らに見せる。
問1(2)
答え:空気抵抗、マグナム効果、反発係数によって160km〜130km以下になる。
・・・・
なるほど、僕はびっしり答えの書いてある答案用紙を手にとって見る。
追い風5m/sの場合、など様々な仮定でシミュレーションの結果が書いてある。
さすがの僕も読み解けない途中式がある。しかもこれって高校生で習わない公式のような。。
僕が一生懸命数式の意味を解こうと頭を抱えていると、向いから玲子さんが回答用紙を奪う。
「もう、何本気で解こうとしてるのよ。これはテストなのよ。
本当に正解かなんてどうでもいいのよ。」
玲子さんが呆れたように言う。
「なるほど、つい解こうとしてしまいました。
要は、より実践的な考え方ができるかどうかと言うことを見たかったのですね。」
僕がそう答えると、玲子さんはさらに呆れたように言う。
「まあ、一郎君にはそう取ってもらって構わないわ。
本質的なことを答えられるかどうか。質問者の意図を汲んでくるかどうかを測りたかったのよ。」
玲子さんがここまで言うと仁太が横から入ってきて言う。
「うん、さすがだと思うよ。少なくても野球がどういうスポーツなのかはわかっていることになるしね。
僕がもし野球を知るまえにこの問題に出会っていたら反発係数とか答えられなかったよ。どんなボールなのか
イメージもつけなかっただろうね。」
「仁太さんって、本当に野球についてはあまり知らないのですね。」
九条さんが控えめに言う。
「まあ、そんなことより一郎君の友達なんでしょ!その人」
仁太が僕と玲子さんを交互に見る。
僕は首を傾げて玲子さんを見る。
「どうだかね。本人がそこまで考えて思い浮かばないのであれば違うのかも。
でも、用紙の【問題2】あなたの友人の名前を1人書きなさい。では一郎君、君の名前が書かれていたわ。」
そう言ってもう一度回答用紙を皆に見せる。
あー、思い出した。確か、隣の席の渡辺八尋から名前を貸してほしいと言われたんだっけ。
僕は納得するように名前を貸しただけと説明する。
「なるほど、それでもさすがだわ。君の名前を書くなんてセンスあるわね。
ま、とにかく5人目の部員はその八尋君って人ね。私から改めて勧誘するわ。」
そう言って回答用紙を箱にしまう。
「あ、あのう、もう1人、名前を書いていなかったその人はなんて回答したの?」
九条さんが問う。
「うん、これはまた八尋君とは違ったタイプで面白い回答だったわ。」
そう言って玲子さんは再び箱の中からゴソゴソと探し出して1枚の回答用紙を僕らに見せる。
【問題1】
・・・
(1)回答:実際には0.47秒より遅くなる。
(2)回答:やってみないと分からない。
なるほど、、確かにこの人も色々理解しての回答ということか。
「名前わかったら勧誘できたのに。。」
そう九条さんが残念そうに言う。だけど仁太と玲子さんはそこまで気にしていないようだ。
「そうだね、九条さんの言うとおり名前が書いてあったらよかった。
でもきっとこの人は自分の名前を書きたくない何らかの理由があったのかもしれない。
それに、そのために【問題2】を入れたんだよ。」
仁太がそう言うのをきてなるほど、と思う。
友達から探ると言うことか。
「ちなみに、友達の名前はなんだったの?」
僕が仁太に尋ねると、横から玲子さんが答える。
「三田陸っていう人よ。誰か知ってる?」
玲子さんの問いに僕は頷く。
「僕と同部屋の人だ。」
「だったら話は早いわね。まずはその三田陸君を勧誘するのね。
それから彼の友人を探って、一緒に入部してもらうのよ。これで部員は全部で7人になるわ。」
玲子さんはそう簡単にいうが、そもそもあの三ちゃんが野球に興味があるのか微妙だ。
「はあ、まあ一応誘ってはみます。」
僕は一応返事はしてみる。あまり自信がないのが伝わったのか、仁太が心配そうな声で言う。
「一郎君、がんばっって!きっとうまくいくよ。」
仁太に言われてなんか調子狂う。アホっぽいというか。。
しかしこの問題を作ったのも仁太なんだから信じられない。いいやつなのだが。
そうこうしているうちに日も暮れてきてそろそろお開きにしようということになった。
僕は三ちゃんを野球部に勧誘すること、そして玲子さんは仁太と一緒に八尋を勧誘することになった。
これにはホッとしている。もしかして【問題2】に僕の名前が書いてあったから僕が勧誘しなければならないと思ったのだ。
だけど、八尋にはきっと生徒会から勧誘された方がいいと言うことで玲子さんが一役買ってくれることになったのだ。
どうしたって僕は八尋とは親しい友達にまではなれていなかったから助かったのだ。
それに、野球に興味があると言うより、抽選の特典の方が気になっていたみたいだから。
僕らは明後日の水曜日にもう一度ここで集まることにして今日はお開きになった。
次集まるときは2人増えている目算だそうだ。
さあ、寮に帰って三ちゃんにどう切り出そうかな。
そんことを考えながらすぐ近くの寮へ歩いて帰る。
なんだかんだで野球部を作るのに前向きになっている僕がいた。