大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)
【港のカラス】
時は、夕方4時頃であった。
またところ変わって、境港市岬町《しないみさきちょう》にある魚市場にて…
私は、シカヌマさんを知っている行商のおばちゃんと話をしていた。
私は、パスケースに入っている白黒写真《しゃしん》のおばちゃんに見せた。
おばちゃんは、私に対してママを知ってると答えた。
私は『ご存じでしたか…ありがとうございます。』と言うたあとショルダーバッグの中にパスケースをしまった。
その後、私は行商のおばちゃんに対してあの日(昭和20年8月6日)のことをたずねた。
「あの…たいへん言いにくい話でございますが…昭和20年の8月6日の朝8時15分頃に起こった出来事をご存じでしょうか?」
「はい…その時うちは、西条にいました。」
「最後におふたりをお見かけになられたのはいつ頃ですか?」
「そうね…たしか…8月6日の朝7時前だった…とおもいます。」
「朝7時前…と言うことは…その時おふたりは、その時間に出発した汽車に乗ってどこかへ行かれた…と言うことですね!!」
「そうですけど…」
「おふたりはどちらの汽車に乗り込まれたのですか!?」
「えっ?」
「ですから上りか下りのどちらの汽車に乗って行かれたのかと聞いているのですよ!!」
「さあ、どちらだったかはおぼえてないけど…」
「おぼえてない!?」
「ええ…ああ、思い出したわ!!」
「思い出した?」
「たしか…8月5日の夕方頃だったかしら…おふたりが駅前にあるごはん屋で話をしていたのを聞いたのよ…シカヌマさんが写真にうつっていた女性に対してウキウキした表情で『一緒に広島へ行こうよ〜』と言うたのよ。」
「まさか…」
行商のおばちゃんから話を聞いた私は、気持ちが動揺した。
(ドーン!!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!)
この時、私の中でものすごく大きな地鳴りが響いたと同時にものすごく大きな雲がもくもくとあがっていく恐ろしい風景が映った。
…と言うことは…
ママは…
広島で…
…………………
そんな…
…………………
おばちゃんは、心配げな声で私に言うた。
「どうしたの?」
「えっ?」
「あんた顔色が悪いわよ〜」
「えっ?…ああ…すみません…失礼します。」
私は、行商のおばちゃんに『失礼します。』と言うたあと魚市場から出た。
時は、夕方6時半頃であった。
またところ変わって、釣り公園にて…
私は、行商のおばちゃんからママとシカヌマさんを知っている男性がここで毎晩夜釣りをしていると聞いたので再びここに来た。
この時、男性は夜釣りをしていた。
私は、夜釣りをしている男性に対して行商のおばちゃんから聞いた話をした。
男性は、私に対してこう言うた。
「シカヌマのババアとキョウコのことなら知ってるよ〜」
「えっ、ほんとうですか!?」
「ああ、ほんとうだよ。」
「あのすみません…あの…おたくは昭和20年の8月6日のあの日は、どちらにいらっしゃいましたか?」
「オレはその時、寝てたよ。」
「寝てた?」
「ああ…オレはその時、ナツカゼこじらせたので…1日中ふとんに入っていた…」
「そうですか…それでは、その前日はどうなされていたのですか?」
「西条駅前《えきまえ》にあるごはん屋にいたよ。」
「そうですか。」
「その時にシカヌマのババアとキョウコを見たよ。」
男性は、吸いかけのハイライトを一服くゆらせたあと私に言うた。
「シカヌマのババアは、ウキウキした顔でキョウコに対して『一緒に広島へ行こうよ〜』と言うたのだよ〜」
「あの…シカヌマさんはなんで知人の女性に広島へ一緒に行こうよと言うたのですか?」
「決まってるだろ…シカヌマのババアの知人の家に助けを求めに行くのだよ。」
「シカヌマさんの知人カタの家に助けを求めに行くって?」
「そうだよ…そう言うてたよ。」
「あの…非常に言いにくい話でございますが…ふたりはなんらかのことに困られていた…があったのでしょうか?」
私の問いに対して、男性は決めつけ言葉で言うた。
「そうだよ。」
「そうだよって?」
「だから、シカヌマのババアはカネに困っていたのだよ〜」
「それほんとうですか?」
「ほんとうだよ…わしはこの耳でふたりの会話をしっかりと聞いたのだよ。」
決めつけでものを言うなよ…
私はさめた表情でつぶやいたあと、男性に言うた。
「あの〜たいへんもうしわけないお話でございますが、おたくはシカヌマさんがカネに困っていたと言いましたね。」
「ああ。」
「コンキョはあるのですか?」
「あるから言うたのだよ〜」
だから、決めつけでものを言うなよ…
私は、さめた表情でつぶやいたあと男性に言うた。
「あの…シカヌマさんがカネに困っていた…と言うコンキョを知っていると言うのであれば、ワケを話していただけますか?」
「だから、シカヌマのババアは金遣《かねづか》いが荒いんだよ〜」
「金遣《かねづか》いが荒いとはどう言うことですか?」
「シカヌマのババアは、カネのトラブルを起こしていたのだよ〜」
「カネのトラブルを起こしていたって?」
「そうだよ。」
男性は、釣りざおについているリールを使って糸を海から引き上げた。
その後、さおをしまう準備を始めた。
私は、男性にこう言うた。
「それほんとうの話ですか?」
「ほんとうだよ!!ほんとうだから言うたのだよ!!」
「例えば、どう言った面のトラブルが多かったのですか?」
男性は、吸いかけのたばこを下に落としたあとくつのかかとでたばこをふみつけながら言うた。
「シカヌマのババアは、18の時に遊郭《ヨシワラ》に売られた娘《こ》だった…」
「遊郭《ヨシワラ》…」
「あの大火で遊郭《くるわ》が焼け落ちた事件のあと、シカヌマのババアは松山の遊郭《くるわ》へ移った…その後…西条にあったお茶屋へ来たのだよ。」
「はぁ〜」
「シカヌマのババアは、昭和19年の8月に上得意さまのカネを盗んだのだよ…5000円だよ5000円!!」
「5000円?」
くだらん…
なんで少額のおカネでもめごとが生じたのか…
私は、さめた表情でつぶやいた。
男性は、怒った表情で私に言うた。
「あんたはなんで少額のおカネでもめるのかと言おうとしたけど、あの当時の5000円は今の金額に直したら3000万だぞ3000万!!」
「3000万!?」
「そうだよ!!」
「信じられん〜」
「シカヌマのババアは、複数の金回りのいい男に対してカネのムシンをしたのだよ!!…『ちいさいけどジブンのオミセをもちたいの…』と言うて、男からカネを借りた…何人の男を食い物にしたのか…」
「それであの日…」
「そうだよ…あれたしか8月4日のことだったよ。」
「8月4日。」
「ああ…あの日の深夜に、西条《ちょうない》にある家で男が殺された事件があったのだよ…被害者《がいしゃ》の男は、西条《じもと》の資産家の家のぼんぼんだった…ぼんぼんはシカヌマのババアを力で犯したのだよ…それから数分後にシカヌマのババアはぼんぼんをナイフでズタズタに斬《き》りつけて殺したのだよ…だけど、カネを盗ることはできなかった…」
「シカヌマさんが強盗殺人を犯したって?」
「そうだよ…」
「あの、最後に一点だけおたずねしますが…シカヌマさんの知人のカタは、広島市内に住まわれていたのですか?」
「そうだよ…たしか…トーカイチに家があったな〜」
「トーカイチ?」
「そうだよ…だけどあの一撃で家が吹っ飛んだよ。」
「ウソ…」
「ほんとうだよ…あとかたもなくなってるよ。」
「それじゃあ、シカヌマさんと女性は?」
「死んだよ〜」
「そんな…死んだ…」
ことの次第を聞いた私は、全身がブルブルと震えた。
やっぱりそうだった…
ママは…
シカヌマさんと一緒に…
あの恐ろしい雲の下で…
……………………
(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)
時は、深夜11時頃であった。
私は、境港線の各駅停車《どんこう》に乗っていた。
「うううううううううううううう…ママ…ママ…ママ…」
私は、声を震わせながら泣いた。
ママはあの日…
なんでシカヌマさんと一緒に広島へ行ったのか…
なんで…
なんで…
………………………
またところ変わって、境港市岬町《しないみさきちょう》にある魚市場にて…
私は、シカヌマさんを知っている行商のおばちゃんと話をしていた。
私は、パスケースに入っている白黒写真《しゃしん》のおばちゃんに見せた。
おばちゃんは、私に対してママを知ってると答えた。
私は『ご存じでしたか…ありがとうございます。』と言うたあとショルダーバッグの中にパスケースをしまった。
その後、私は行商のおばちゃんに対してあの日(昭和20年8月6日)のことをたずねた。
「あの…たいへん言いにくい話でございますが…昭和20年の8月6日の朝8時15分頃に起こった出来事をご存じでしょうか?」
「はい…その時うちは、西条にいました。」
「最後におふたりをお見かけになられたのはいつ頃ですか?」
「そうね…たしか…8月6日の朝7時前だった…とおもいます。」
「朝7時前…と言うことは…その時おふたりは、その時間に出発した汽車に乗ってどこかへ行かれた…と言うことですね!!」
「そうですけど…」
「おふたりはどちらの汽車に乗り込まれたのですか!?」
「えっ?」
「ですから上りか下りのどちらの汽車に乗って行かれたのかと聞いているのですよ!!」
「さあ、どちらだったかはおぼえてないけど…」
「おぼえてない!?」
「ええ…ああ、思い出したわ!!」
「思い出した?」
「たしか…8月5日の夕方頃だったかしら…おふたりが駅前にあるごはん屋で話をしていたのを聞いたのよ…シカヌマさんが写真にうつっていた女性に対してウキウキした表情で『一緒に広島へ行こうよ〜』と言うたのよ。」
「まさか…」
行商のおばちゃんから話を聞いた私は、気持ちが動揺した。
(ドーン!!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!)
この時、私の中でものすごく大きな地鳴りが響いたと同時にものすごく大きな雲がもくもくとあがっていく恐ろしい風景が映った。
…と言うことは…
ママは…
広島で…
…………………
そんな…
…………………
おばちゃんは、心配げな声で私に言うた。
「どうしたの?」
「えっ?」
「あんた顔色が悪いわよ〜」
「えっ?…ああ…すみません…失礼します。」
私は、行商のおばちゃんに『失礼します。』と言うたあと魚市場から出た。
時は、夕方6時半頃であった。
またところ変わって、釣り公園にて…
私は、行商のおばちゃんからママとシカヌマさんを知っている男性がここで毎晩夜釣りをしていると聞いたので再びここに来た。
この時、男性は夜釣りをしていた。
私は、夜釣りをしている男性に対して行商のおばちゃんから聞いた話をした。
男性は、私に対してこう言うた。
「シカヌマのババアとキョウコのことなら知ってるよ〜」
「えっ、ほんとうですか!?」
「ああ、ほんとうだよ。」
「あのすみません…あの…おたくは昭和20年の8月6日のあの日は、どちらにいらっしゃいましたか?」
「オレはその時、寝てたよ。」
「寝てた?」
「ああ…オレはその時、ナツカゼこじらせたので…1日中ふとんに入っていた…」
「そうですか…それでは、その前日はどうなされていたのですか?」
「西条駅前《えきまえ》にあるごはん屋にいたよ。」
「そうですか。」
「その時にシカヌマのババアとキョウコを見たよ。」
男性は、吸いかけのハイライトを一服くゆらせたあと私に言うた。
「シカヌマのババアは、ウキウキした顔でキョウコに対して『一緒に広島へ行こうよ〜』と言うたのだよ〜」
「あの…シカヌマさんはなんで知人の女性に広島へ一緒に行こうよと言うたのですか?」
「決まってるだろ…シカヌマのババアの知人の家に助けを求めに行くのだよ。」
「シカヌマさんの知人カタの家に助けを求めに行くって?」
「そうだよ…そう言うてたよ。」
「あの…非常に言いにくい話でございますが…ふたりはなんらかのことに困られていた…があったのでしょうか?」
私の問いに対して、男性は決めつけ言葉で言うた。
「そうだよ。」
「そうだよって?」
「だから、シカヌマのババアはカネに困っていたのだよ〜」
「それほんとうですか?」
「ほんとうだよ…わしはこの耳でふたりの会話をしっかりと聞いたのだよ。」
決めつけでものを言うなよ…
私はさめた表情でつぶやいたあと、男性に言うた。
「あの〜たいへんもうしわけないお話でございますが、おたくはシカヌマさんがカネに困っていたと言いましたね。」
「ああ。」
「コンキョはあるのですか?」
「あるから言うたのだよ〜」
だから、決めつけでものを言うなよ…
私は、さめた表情でつぶやいたあと男性に言うた。
「あの…シカヌマさんがカネに困っていた…と言うコンキョを知っていると言うのであれば、ワケを話していただけますか?」
「だから、シカヌマのババアは金遣《かねづか》いが荒いんだよ〜」
「金遣《かねづか》いが荒いとはどう言うことですか?」
「シカヌマのババアは、カネのトラブルを起こしていたのだよ〜」
「カネのトラブルを起こしていたって?」
「そうだよ。」
男性は、釣りざおについているリールを使って糸を海から引き上げた。
その後、さおをしまう準備を始めた。
私は、男性にこう言うた。
「それほんとうの話ですか?」
「ほんとうだよ!!ほんとうだから言うたのだよ!!」
「例えば、どう言った面のトラブルが多かったのですか?」
男性は、吸いかけのたばこを下に落としたあとくつのかかとでたばこをふみつけながら言うた。
「シカヌマのババアは、18の時に遊郭《ヨシワラ》に売られた娘《こ》だった…」
「遊郭《ヨシワラ》…」
「あの大火で遊郭《くるわ》が焼け落ちた事件のあと、シカヌマのババアは松山の遊郭《くるわ》へ移った…その後…西条にあったお茶屋へ来たのだよ。」
「はぁ〜」
「シカヌマのババアは、昭和19年の8月に上得意さまのカネを盗んだのだよ…5000円だよ5000円!!」
「5000円?」
くだらん…
なんで少額のおカネでもめごとが生じたのか…
私は、さめた表情でつぶやいた。
男性は、怒った表情で私に言うた。
「あんたはなんで少額のおカネでもめるのかと言おうとしたけど、あの当時の5000円は今の金額に直したら3000万だぞ3000万!!」
「3000万!?」
「そうだよ!!」
「信じられん〜」
「シカヌマのババアは、複数の金回りのいい男に対してカネのムシンをしたのだよ!!…『ちいさいけどジブンのオミセをもちたいの…』と言うて、男からカネを借りた…何人の男を食い物にしたのか…」
「それであの日…」
「そうだよ…あれたしか8月4日のことだったよ。」
「8月4日。」
「ああ…あの日の深夜に、西条《ちょうない》にある家で男が殺された事件があったのだよ…被害者《がいしゃ》の男は、西条《じもと》の資産家の家のぼんぼんだった…ぼんぼんはシカヌマのババアを力で犯したのだよ…それから数分後にシカヌマのババアはぼんぼんをナイフでズタズタに斬《き》りつけて殺したのだよ…だけど、カネを盗ることはできなかった…」
「シカヌマさんが強盗殺人を犯したって?」
「そうだよ…」
「あの、最後に一点だけおたずねしますが…シカヌマさんの知人のカタは、広島市内に住まわれていたのですか?」
「そうだよ…たしか…トーカイチに家があったな〜」
「トーカイチ?」
「そうだよ…だけどあの一撃で家が吹っ飛んだよ。」
「ウソ…」
「ほんとうだよ…あとかたもなくなってるよ。」
「それじゃあ、シカヌマさんと女性は?」
「死んだよ〜」
「そんな…死んだ…」
ことの次第を聞いた私は、全身がブルブルと震えた。
やっぱりそうだった…
ママは…
シカヌマさんと一緒に…
あの恐ろしい雲の下で…
……………………
(ピーッ、ゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトンゴトン…)
時は、深夜11時頃であった。
私は、境港線の各駅停車《どんこう》に乗っていた。
「うううううううううううううう…ママ…ママ…ママ…」
私は、声を震わせながら泣いた。
ママはあの日…
なんでシカヌマさんと一緒に広島へ行ったのか…
なんで…
なんで…
………………………