大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【帰れない者たちへ】

それからまた2時間後であった。

ところ変わって、名古屋市中区の本重通りにあるたばこ屋にて…

私は、カウンターに設置されている10円の赤電話機を使って電話をかけていた。

「もしもし、関市東本郷の△△川さまのおたくでございますか?…お世話になります…私はコリントイワマツヨシタカグラマシーでございます…私はあの…興信所からおつかいをたのまれているのです…あのそちらに武下三永《たけしたみえ》さまはおこしになられましたか?…はい、今現在のミョウジは武下《たけした》でございます…そうですか…分かりました…あの、もしご本人さまがおこしになられた時には、ご家族のみなさまがご心配になられていることをお伝え願います…よろしくお願いいたします…お世話になりました。」

(ガチャ…ジャラジャラジャラジャラジャラ…)

受話器を置いたと同時に返却口から10円玉がたくさん出た。

私は、赤のラッションペンを使ってメモパッドに『確認済み』と記入した。

……………………

またところ変わって、栄公園の敷地内にある電話ボックスにて…

私は、四角の黄色のコイン投入式のプッシュホンを使って電話をかけていた。

「もしもし、磐田市にお住まいの◯山■子さまのおたくでございますか?…お世話になります…私はコリントイワマツヨシタカグラマシーでございます…あの、そちらに武下三永《たけしたみえ》さまはいらっしゃいますか?…お越しになられてないのですね…分かりました…もし、おたくにおうかがいになられましたら…ご家族のみなさまがたいへん心配なされていることをお伝え願いますか?…よろしくお願いいたします…お世話になりました。」

(ガチャ…ジャラジャラジャラジャラジャラジャラ…)

受話器を置いたと同時に返却口から10円玉がたくさん出た。

私は、赤のラッションペンを使ってメモパッドに『確認済み』と記入した。

……………………

またところ変わって、栄公園から東へ500メートル先にあるたばこ屋にて…

私は、10円の赤電話機を使って電話をかけていた。

「もしもし、日進市にお住まいの△◯□美さまのおたくでございますか?…私はコリントイワマツヨシタカグラマシーでございます…えっ?…もしもし…△◯さまのおたくでございますよね…すみませんでした〜」

ああ…

まちがい電話をやらかした〜

………………………

時は、夕方6時20分頃であった。

またところ変わって、大洋通りにある松坂屋デパートの正面玄関前にて…

私は、正面玄関前にある電話ボックスにある四角のだいだい色のコイン投入式のプッシュホンを使って電話をかけていた。

「もしもし、日進市にお住まいの△◯さまのおたくでございますか?…あっ、お世話になります…コリントイワマツヨシタカグラマシーでございます…あの、そちらに武下三永《たけしたみえ》さまはお越しになられましたか?…はい、そうですが…もしもし!!ご本人を見られた!?…それはいつ頃ですか!?…おぼえてないけど場所は知ってる!?…矢場公園…岐阜へ行く…もしもし!!それでしたら岐阜にお住まいの方におたずねしましょうか!?…分かりました〜」

(ガチャ…ジャラジャラジャラジャラジャラ…)

受話器を置いたと同時に、返却口に大量のコインが出た。

私は、万年筆を使って手帳にメモ書きをしながら『どうなっているのだ…』とぼやいた。

………………………

時は、夜8時55分頃であった。

またところ変わって、栄公園の中にある電話ボックスにて…

私は、四角の黄色のコイン投入式のプッシュホンを使って電話をかけていた。

「もしもし、岐阜市にお住まいの□村◯子さまのおたくでございますか?…私、コリントイワマツヨシタカグラマシーでございます…お世話になります…あの、そちらに武下三永《たけしたみえ》さまはいらっしゃいますか?…もしもし、私は興信所からおつかいを頼まれたのです…どこの興信所と言われても…ですから、それはお答えできません…もしもし、私は三永《みえ》さんを探しているのです…ご家族の方がたいへん心配なされているのです…何日か覚えてませんけど…矢場公園でご本人とお会いになられましたね…いや、念のために確認を取っているのです…はい…はい…間違いないですね〜」

…………………………

この時であった。

クリーム色のトレンチコート姿で黒のサングラス男が公園にやって来た。

男は、私がいる電話ボックスへ向かって歩いていた。

私は、それを知らずに電話の応対をしていた。

「三永《みえ》さんは、おたくとお会いしたあと岐阜へ行かれたのですね…おたくは、岐阜市内《しない》にあるソープ店へ入店することをすすめたのですね…えっ?…3日でやめた!?…もしもし!!もしもし!!」

この時であった。

(バーン!!バーン!!バーン!!)

黒のサングラス男が平手打ちでアクリル板を激しくたたいた。

ああ!!

こわい!!

やめてくれ〜

私は、受話器ごしにいる相手に話した。

「もしもし!!こちらはすごく困っているのですよ!!頭がこんがらかったとはどう言うことですか!?ひとの話を聞いてください!!」

(ギィ…グイ!!)

この時であった。

黒のサングラス男が無理やりドアをあけたあと私のえりくびを強引につかんだ。

「ああああああああああああああああああ!!」
「オラ!!」
「ああああああああ!!」
「オドレに電話がかかってきたから矢場公園へ行け!!」
「分かったからひっぱらないで〜」

……………………

またところ変わって、矢場公園の敷地にある電話ボックスにて…

私は、四角の黄色のコイン投入式のプッシュホンにかかってきた電話の応対をしていた。

「もしもし、コリントでございます〜」

この時、受話器のスピーカーから気色悪い男の声が聞こえた。

「ああ、コリントさまでおますか?」
「その声は…溝端屋の番頭《ばんと》はん?」
「へえ、そうでおますが…」

番頭《ばんと》はんは、ものすごく気色悪い声で私に言うた。

「もしもしコリントさん。」
「なんでしょうか?」
「あの〜、すみませんけど…その…なんて言うか…ああ、思い出しやした…あの…武下三永《たけしたみえ》さまをおみかけしやしたか?」
「三永《みえ》さん?」
「へえ。」

うそ…

なんで!?

私の身体によりし烈なセンリツが走った。

この時、受話器の向こうから恐ろしい声が聞こえた。

「おいコラ!!見たのか見てないのかどっちだ!?」

私は、おたついた表情で言うた。

「番頭《ばんと》はん、そんなにどならなくてもいいじゃないですか〜」
「やかましいコラ!!見たのか見てないのかさっさと答えろ!!」
「ですから、見てません〜」

受話器ごしにいる番頭《ばんと》はんは、ニヤニヤした口調で『コリャシッケイしました〜』と言うたあとこう言うた。

「おみかけになられてないのですね…わかりやした…あの…すんまへんけど、もしカノジョをみかけたらご一報ねがいますか?…いつ、どこでみかけたかと言うだけでいいです〜」
「分かりました。」
「ほな、よろしゅうたのんまっせ〜…」

(ガチャ…ツーツーツーツーツーツー…)

電話はそこで切れた。

なんだこの電話は…

……………………

私は、拍子抜けした表情でつぶやきながら受話器を置いた。
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