大河ドラマ・乳房星(たらちねぼし)

【転がる石】

さて、その頃であった。

またところ変わって、国電福井駅の待合室にて…

ベンチの上にスーパーマップルの中部地方の道路地図がひらいた状態で置かれていた。

私は、万年筆を使ってここまで来た道のりを地図上に書き込んだ。

岐阜方面を中心に三永《みえ》さんを探したが、どこにもいなかった。

…………………

もうイヤだ…

しんどい…

…………………

私は、悲鳴をあげそうになった。

……………………

それから20分後であった。

(ピンポーン〜、ピンポーン〜)

待合室にチャイムが鳴ったあと、お電話の呼び出し放送が聞こえた。

私は、万年筆と道路地図をショルダーバッグに収納したあと待合室から出ようとした。

この時、駅の案内係の女性が私に声をかけた。

「コリントイワマツヨシタカグラマシーさま〜」
「なんでしょうか?」
「お電話がかかってます〜」
「どこから!?」
「松山市で暮らしているパク・ソヒさまからですよ〜」

私は、ものすごくイラついた声で『行けばいいんだろ行くよ!!』と言うたあとブツブツ言いながら案内所へ行った。

またところ変わって、駅の案内所にて…

私は、灰色のプッシュホンの受話器を手にしたあと怒った声で言うた。

「もしもしソヒ姐《ねえ》はん…ソヒ姐《ねえ》はん!!今どこにいるのかはっきり言うてよ!!」

またところ変わって、松山市三番町通りにあるキスケパーキング(今はドン・キホーテに変わった)の前にて…

ソヒ姐《ねえ》はんは、キスケパーキングの入り口付近にある電話ボックスにいた。

アクリル板に小さな紙(ピンクチラシ)がたくさん貼られていた。

ソヒ姐《ねえ》はんは、四角のだいだい色のコイン投入式のプッシュホンを使って電話をかけていた。

ソヒ姐《ねえ》はんは、ものすごく泣きそうな声で私に言うた。

「もしもしよーくん!!気を確かにして聞いてちょうだい!!…ほたるさんが経営していたお店の前に少なくとも8人前後のチンピラたちが集まっていたところをみたわよ!!」

私は、おどろいた声で言うた。

「なんだって!?ほたるさんが経営していたお店の前にチンピラたちが集まっていた!?…ソヒ姐《ねえ》はん…ソヒ姐《ねえ》はん!!」

電話ボックスにいるソヒ姐《ねえ》はんは、泣きそうな声で言うた。

「よーくん!!きょうから当分のあいだはほたるさんの店に行かないでね!!」
「分かった…そうする…」
「それともうひとつ、非常事態が発生したから知らせるわね!!」

ソヒ姐《ねえ》はんから2件目の非常事態が発生したことを聞いた私は、おどろいた声で言うた。

「ニュース!?…さあ…その時間はラジオを聴いていなかった…テレビも観てなかったけど…ニュースってなに!?…イラク・イラン戦争のニュース!?…それとも今週の歌のランキングのこと!?…それとも、ソ連がアフガンに侵攻したニュース!?…はっきり言うてよ!!…だからなに!?…有名企業に勤務している社内恋愛のカップルさんのご結婚おめでとうのニュース!?…社内恋愛のカップルさんのご結婚おめでとうが全国ニュースのトップで報じられたからおめでとうと言えと言うのか!?…ソヒ姐《ねえ》はん!!」

私に怒鳴られたソヒ姐《ねえ》はんは、今にも泣き出しそうな声で『違うのよ!!お願いだから落ち着いて聞いてよ!!』と言うたあと、緊急ニュースの内容を伝えた。

私は、おどろいた声で言うた。

「岐阜の金津園…そこはフーゾク店が多い場所じゃないか!!…なんだって…三永《みえ》さんが暴力をふるわれた!?…三永《みえ》さんに暴力をふるったヤカラはだれや!?…現職の自衛官のキトウ…キサマの貴に藤で貴藤《キトウ》だな…貴藤《キトウ》がハンラの状態で通りを走っていた!?…ようは、ハンラの貴藤《キトウ》がチンピラたちに追われている様子が防犯カメラに映っていた…と言うことだな…貴藤《キトウ》は三永《みえ》さんのだれにあたる者だ!?…もしもしソヒ姐《ねえ》はん!!」

ソヒ姐《ねえ》はんは、ものすごく泣きそうな声で私に言うた。

「よーくんごめんね…ソヒ…ヤクザに目ぇつけられたの…今から逃げるから…大番頭《おおばんと》はんたちとジナ義姐《ねえ》ちゃんとドナ義姐《ねえ》ちゃんと連絡が取れるようにセッティングしておくから…それまでどうにか持ちこたえてね…よーくん…」

…………………

このあと、ソヒ姐《ねえ》はんは受話器をぶら下げた状態にしたあと電話ボックスから出た。

電話ボックスから出たソヒ姐《ねえ》はんは、足早に逃げ出した。

「ソヒ姐《ねえ》はん!!ソヒ姐《ねえ》はん!!」

ぶら下がった状態になっている受話器のスピーカーから私の叫び声が響いた。

(ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ!!)

時は、午後3時頃であった。

私は、福井駅前でヒッチハイクした長距離トラックに乗って再び旅に出た。

トラックは、北陸自動車道から名神高速道路〜中国自動車道を通って大阪伊丹国際空港へ向かった。

(ゴーッ…)

時は、夜8時頃であった。

私は、大阪伊丹国際空港から最終の全日空機に乗って松山空港へ向かった。

飛行機は、夜9時15分頃に松山空港に到着した。

(グォーン!!キーッ!!バタン!!)

時は、夜10時半頃であった。

またところ変わって、道後温泉《どうご》の伊佐爾波坂《いさにわざか》にある置屋にて…

置屋の前にトヨタコロナのいよてつタクシーが急停車した。

私は、タクシー料金を払ったあと大急ぎで置屋に入った。

置屋の中にて…

ショルダーバッグを持ってタクシーから降りた私は、ものすごくおたついた声で言うた。

「どなたかいらっしゃいますか!?どなたか応対してください!!」

この時、ピンクのフリソデ姿の置屋の姐《ねえ》はんが応対に出た。

「あらよーくん〜」
「姐《ねえ》はん!!」
「どうしたのよ?」
「たいへんだ!!ソヒ姐《ねえ》はんがチンピラたちに目ぇつけられた!!」
「えっ?」
「だから!!ソヒ姐《ねえ》はんがチンピラたちに目ぇつけられたと言うてるのだよ!!」
「ソヒ姐《ねえ》はんがキンピラごぼうに目をつけられた?」
「キンピラじゃなくてチンピラ!!」
「うち、耳が遠いのよ…もう一度言って〜」
「ソヒ姐《ねえ》はんがチンピラたちに目ぇつけられた!!」
「えっ?…ソヒ姐《ねえ》はんがコンピラさんにお参りに行った?」
「もう!!コンピラじゃなくてチンピラですよ!!そのまた上に、ほたるさんの店の前に8人以上のチンピラたちが集まっていたのですよ!!」

話を聞いた姐《ねえ》はんは『ヤダ〜、どうしましょう〜』と言うたあと、近くにいたワンピース姿の奴さんに声をかけた。

「ちょいと〜」
「なあに?」
「よーくんがほたるさんの店の前にチンピラたちが集まっていたと言うたけど、なにか聞いてない?」

奴さんは、ものすごく言いにくい声で『さあ、聞いてないけど〜』と答えた。

私は、おたついた声で『聞いてない!?』と言うたあとこう言うた。

「ちょっと!!それはいくらなんでも困りますよ!!」

奴さんは、ものすごく言いにくい声で言うた。

「きょう初めて聞いたから分からないのよ〜」

私は、ものすごく怒った声で言うた。

「ちょっと!!私はものすごく困っているのですよ!!」

姐《ねえ》はんは、ものすごく困った表情で言うた。

「よーくん落ち着いてよ〜」

私は、ものすごく怒った表情で『落ち着いていられるか!!』と言うたあとこう言うた。

「姐《ねえ》はん!!ほたるさんはなんらかのトラブルに巻き込まれた可能性があるのですよ!!」
「たとえば?」
「たとえばこう言うことが考えられます!!店の常連客の中に用心棒《ケツモチ》を事務所《ヤクザ》にたのんでいたが用心棒代《だいきん》をめぐってトラブルになった…とか…」

この時、別の奴さんが私に言うた。

「あっ、思い出したわ。」
「えっ?」

別の奴さんは、私に対してこう言うた。

「ちょっと小耳にはさんだ話だけど…ちょいの間で働いていた40代ぐらいの女性がもとダンナからフクエンをせまられたことを聞いたわ〜」
「もしかして…貴藤《キトウ》のこと?」

すると、ワンピース姿の奴さんは『そうよ!!その男よ!!』と言うたあとことの次第を私に話した。

「その貴藤《キトウ》は、松山市内《しない》にある事務所《くみ》にいる知人に用心棒《ケツモチ》を頼んでいたわよ!!貴藤《キトウ》は、今から7年ほど前に高知市《こうち》の菜園場町《さえんば》の通りで東予のある市《まち》にある事務所《くみ》の連中たちと乱闘騒ぎを起こしたのよ…その際に、貴藤《キトウ》は知人の紹介で松山市内《しない》にある事務所《くみ》の親分と出会ったのよ〜」
「やっぱり。」
「貴藤《あのバカ》はなにを考えているのかしらね…現職の自衛官…しかも、リクイの階級を持っている幹部自衛官が事務所《ヤクザ》と交友関係を持っていた…聞いてあきれたわよ〜」
「サイアクね〜」

奴さんたちは、口々に言いまくった。

なんてこった…

ほたるさんの店に貴藤《キトウ》が出入りしていた?

………………

他にも考えられるケースはあると思う…

どのみちにしても、ほたるさんが危ない…

なんとかしなきゃ…

………………………
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